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2015.4.7

必要なのは勇気

みやざき中央新聞、魂の編集長、水谷もりひと氏の心に響く言葉より…

メンタルコーチの筒井正浩さんはこんな話をされた。

筒井さんと言えば、かつて大阪の履正社高校野球部のメンタルコーチをして甲子園に導いたことがマスコミに取り上げられ、以来、ジャンルを問わず、いろんな人のメンタルコーチとして活躍している。

以前は年収1200万以上稼ぐ高給取りのサラリーマンだった。

彼には夢があった。

しかし、それで食べていけるか分からない。

だから会社は辞められなかった。

8年間、悶々としていたが、44歳のとき、会社を辞める決意をした。

大きな壁は「嫁さんにどう言うか」だった。

ある日、意を決して言った。

「夢ができたんや。仕事を辞めたい。ただ、すぐには十分な収入がないと思う」

奥さんは一言こう言った。

「それなら私も明日から仕事せなあかんね」

筒井さん、奥さんの懐の広さに感動した。

案の定、メンタルコーチの仕事はなかなか収入には結びつかなかった。

ひと月の収入が4万円。

これが16か月続いた。

「もうあかん」と思った。

そんなとき、人との出会いが彼の人生を大きく変えた。

最初のきっかけは元神戸製鋼ラグビー部のスーパースター、平尾誠二さんだった。

平尾さんはラグビー日本代表の監督を引退後、スポーツ文化振興のために月一回の6か月間コース、毎回いろんなゲストを呼ぶというセミナーを主催していた。

一回目のゲストは元サッカー日本代表の岡田武史監督だった。

講演後、会場を出た筒井さんは、控室に入る平尾さんの姿を目にした。

「あっ、平尾さんや。話ができたらええなぁ」と思った。

その瞬間、「でもあんな有名な人と話をするなんて無理」という思いが頭をよぎった。

「このまま家に帰っても、控室のドアをノックして断られて家に帰っても、結果は同じや。それなら0より1の可能性に賭けてみよう」

控室の前まで行った。

心臓がバクバクした。

ノックができない。

どうしようと思っているうちに右手首が二回動いた。

「コンコン」とドアをノックする音がした。

「やってもうーた。もう逃げられない」

中から「ハイ」という声がした。

ドアを開けた。

目と目が合った。

平尾さんは「どなたですか?」という顔をした。

「今日、講演を聴いて感動しました。お礼だけ言いたくて…。お疲れのところすみませんでした」と言ってドアを閉めようとしたら、「どうぞ入ってください」と言われ、びっくりした。

向かい合わせで座った。

どうしよう。

とりあえず名刺交換だ。

平尾さんは筒井さんの「メンタルコーチ」という肩書を見て、「これ、なんですか?」と聞いてきた。

「スポーツ選手のメンタルをサポートするんです」と筒井さんが答えると、平尾さんは急に興奮して言った。

「絶対この道でメシ食ってください。本気で応援します。諦めないでください」

平尾さんは部屋を出て行き、すぐその日のゲスト、岡田監督をつれて来て、筒井さんに紹介した。

それから平尾さんはいろんな人を筒井さんに紹介してくれた。

ここから人生が劇的に変わっていった。

「ドアをノックしたら迷惑するんじゃないかと、みんな勝手に思い込んでいるけど、ノックしてごらんよ。扉を開けてくれるから。まず動こう。動き出したら見える風景が変わってくるで」と筒井さん。

そして若い人たちにこんな一言も。

「僕のやったことは手首を2回動かしただけ。その時、必要なのは勇気や。その勇気も最初の一歩だけでええんや」

『いま伝えたい!子どもの心を揺るがす“すごい”人たち』ごま書房新社


勇気について、詩人ゲーテの素晴らしい言葉がある。

「名誉を失っても、もともとなかったと思えば生きていける。

財産を失っても、またつくればよい。

しかし、勇気をうしなったら、生きている値打ちがない」

そして、死ぬ前に人が後悔する5つこと(ボニー・ウェア)の中には、こんな言葉があった。

「自分の気持ちをはっきり伝える勇気がほしかった」

最初の一歩を踏み出せないときに思うこと…

笑われるかもしれない。

バカにされるかもしれない。

批判されるかもしれない。

怒られるかもしれない。

無視されるかもしれない。

勇気を奮(ふる)い起こして、最初の一歩を踏み出したい。



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