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2015.3.25

えびすさんの話

諏訪中央病院名誉医院長、鎌田實氏の心に響く言葉より…

宮崎県の高千穂神社の後藤俊彦宮司にお会いしました。

彼との出会いはとてもエキサイティングでした。

「面白い伝説があります」と後藤宮司が教えてくれた。

イザナギとイザナミが結婚して、最初に産まれた子は未熟児で「ヒルコ」と名付けられた。

とんでもない名前をつけています。

失敗作として海に流しました。

そのヒルコは流れ流れて現在の大阪と兵庫の境あたりになる摂津国に流れ着いた。

そこの漁師に拾われて、これは天つ神の御子だからと大事に育てられた。

自らが海に流された神ですから、人の世の悲しみや苦しみがわかる神となって、それがえびすさんになった。

西宮の神社に祀られていると言います。

なるほどな、と思いました。

人間が人間でいることって捨てたもんじゃないんだ。

疎んじられ、見捨てられても、もうダメなんてことはないのです。

ひどい目にあったからこそ、辛い人生を生きている人の気持ちがわかる。

人生ってうまくできているのです。

この神話を聞いて、僕は後藤さんに自分の生い立ちを語った。

生んでくれた父や母は僕を育てられなかった。

捨てられたことは辛かったけど、貧乏なのに僕を拾って育ててくれた養父や養母がいた。

人間がやることって捨てたもんじゃないなって思った。

その貧乏な人に育てられたおかげで、自分は誰よりも自由に生きられるようになりました。

「イザナギとイザナミの初めてのお子さんも逆境を生きたことによって、たくさんの人を幸せにする神様になったわけですね」

と僕が聞いた。

後藤宮司は、

「もっとも庶民が信仰する神さまになりました。

年の暮れに商売繁盛で笹持ってこいって聞いたことがあるでしょう。

あの庶民信仰の強い神様になりました」

『1%の力』河出書房新社


かとうみちこさんのとても素晴らしい詩がある。

「からいお塩は

おいしい おしるこのかくしあじ

からい くるしみ かなしみ

そして わかれ

みいんな しあわせのかくしあじ」

辛かったことも、苦しかったことも、悲しかったことも、後になって考えてみると、それが全部今の自分に役立っている、と思うことは多い。

そして、松下幸之助氏のように、自分は貧乏で、学歴がなくて、健康でなかったから成功できた、と思う人もいる。

つまり、幸福も不幸も、運も不運も、その人の受け取り方しだい、考え方しだいなのだ。

逆境をどんなふうに捉(とら)えるか。

人生を、楽しく面白く愉快に生きられる人は、どんな状況になっても、そこに光を見出すことができる。

からいお塩は、おいしいお汁粉の隠し味。



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