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2015.3.8

経済学ではなく心理学


セブン&アイ・ホールディングス会長、鈴木敏文氏の心に響く言葉より…

私は常々、「お客様のために」という言葉は絶対に使ってはいけないと言っています。

「お客様のために」ということは、往々にして自分たちの都合が入っている。

自分たち売り手の立場があって、その範囲で何かをすることになるからです。

そうではなくて「お客様の立場で」物事を考えるようにすれば、お客様は自由勝手ですから、我々がしにくい、できないことでも要求できます。

いまの時代に必要なのは、「お客様の立場で」商品や売り方を検討していくことなのです。

売り手の立場から見れば、お客様の要求がたとえわばままに思えても、そのお客様の要求に応えられるようなシステムや商品を作り上げていく。

それが売上や利益を伸ばし、お客様の満足感を満たすという結果に結びついていくのです。

私は入社式で新入社員にいつもこう言います。

「今までお客様として売り場や店舗に接してきたその感覚を、絶対になくさないでほしい」と。

なぜそういうことを言うのかといえば、仕事を始めた新入社員は大抵、「今までセブン-イレブンにお客として入ったことしかなかったけれども、会社に入って売る側に立ってみると、大変な苦労があることが分かった」という感想を述べます。

たしかにそれは新入社員の素直な感想だと思います。

しかし、お客様だった頃の気持ちを次第に忘れてしまい、売り手の論理に染まっていってしまう。

それがもっとも怖いことだと私は思うんです。

お客様の消費行動が心理によって動く時代になってきたのは、お客様の立場で考えることを大切にしてきた我々にとっては大きなチャンスの到来だといえます。

いま消費が冷え込んでいるといわれていますが、大多数の消費者はお金がなくて困っているわけではありません。

先行きへの不安から無駄な消費をせずに、貯蓄に回しているというのが実情です。

人間の欲望は無限で、きっかけさえあれば、どこかで発散したいという心理があるはずです。

だからこそ、人の心を動かすイベントが重要で、それを行うことで新たな需要を喚起し得る可能性があるのです。

消費マーケットの問題は「経済学」の分野から、「心理学」の分野に移っているのです。

いまは不況で売れないといいますが、実は欲しいものがない時代ではないか。

その意味では、我々が見つけ出し、作り、育て上げていかなければならないと思っています。

『ビジネス革新の極意』(鈴木敏文&齋藤孝)マガジンハウス


人は立場が変わると発言も変わる。

立場によって利益が違うからだ。

例えば、自社工場に対して「工場の納期が遅い」などと文句を言っていた営業部長が、転勤で工場長になれば「そんなにすぐに作れるわけないだろう」などと逆のことを言ったりする。

社内の論理は、あくまでも会社の「都合」からきている。

これは会社だけでなく、個人でも同じこと。

自分の「都合」は、すべて自分の側からしか考えなかったときに起こる。

つまり、自分の立場でしかものを見ていないとき。

人間は自分に対してつい甘くなりがちだ。

そして、なかなか自分を客観的に見ることはできない。

相手の立場で考え、見ることができる人でありたい。


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