2015.2.4 |
|
価値を上げること |
|
|
村尾隆介氏の心に響く言葉より…
「値決めは経営である」
この稲盛和夫さんの言葉にあるように、プライシング(値決め)には、ビジネスの大切な要素がたくさんつまっています。
価格は、単なる数字の羅列ではありません。
場合によっては、「うちの会社は、こんな会社」という、言葉よりも強烈な社会へのメッセージにもなり得ます。
ちょっと価格を上げ下げするだけでも、お客さまの層が変わる可能性がありますし、また業界内もしくは地域内におけるあなたの会社やお店のポジショニングも、その価格帯がひとつの決め手となっているはずです。
「売れなければ、値下げして売る」は、誰にでも簡単に思いつく発想です。
でも、これを繰り返していたら、企業としても個人としても、ビジネスの能力は永遠に高まりません。
逆に、「ちょっと高いけど、喜んで支払ってもらえる会社やお店を目指す」と決めたら、そこには絶え間ない工夫と努力、現状に決して満足しない向上心が必要になってきます。
商人としての能力を伸ばす機会が格段に増えてくるのです。
「会社の利益」という話になると、「何か悪いことをしているはず…」「搾取しているのでは?」という連想ゲームになりがちです。
でも、経営者とスタッフが利益を生むことから逃げてしまい、安売りをし続けた結果、協力関係にある会社や人に約束通りの支払いができていない会社があれば、それもまた悪事です。
どんなに社会的に立派なメッセージを掲げた会社であろうと、利益を出さなければ税金は払えません。
せっかく好きなことで起業をしても、利益がなければ、それを続けていくことができません。
小さな会社にとって「価格を下げるのではなく、価値を上げる」は、とても大きなチャレンジです。
でも、その先には経済的な成功や、チーム全体の成長、関わるすべての人たちが幸せになるビジネスの実現など、数え切れないほどの良いことが待っています。
企業のウェブサイトをアクセス解析してみると、意外にも、その会社についての説明や、創業者・経営者の想いが綴られたページがよく見られていることに気づきます。
比べられているのは、決して価格だけではありません。
会社の哲学や使命感、「社会に役立っている度」のようなものも、全部まとめて比べられているのです。
そんな時代において大切なのは、会社自体をブランド化し、会社自体のファンを増やしていくことです。
会社自体に、お客さま以上の「ファン」がいれば、価格競争とは次元の違うビジネスが展開できます。
何よりも、会社自体にファンがついているということは、言い換えるならば、新商品や新サービスを楽しみに待ってくれている人が、常に市場に存在するということになります。
また、安売りしない会社は、例外なく「スタッフ力の強化」に多大なエネルギーと時間を費やしています。
商品やサービスだけではなく、「接していて気持ちがいいスタッフ」も、料金の中に含まれていると捉えているからです。
クレド(信条、働くスタッフが共有する行動指針)を用いて仕事観の共有を行うのはもちろんのこと、研修を充実させたり、社会貢献活動を通じて人間力を育んだり、スタッフ力の強化には多種多様な方法があります。
そして、終わりがありません。
安売りをしない会社は、何よりも職場での「喜びの声のシェア」を重視しています。
これは文字通り、お客さまからいただいた嬉しいコメントを、ミーティングや朝礼などの時間を使って、スタッフ間で共有するというものです。
自分たちのやっていることは、喜ばれているのか?
どんな風に喜ばれているのか?
どのくらい喜ばれているのか?
これをしっかり仕組みとして、全スタッフに伝わるようにしています。
また、お互いを褒め合うようにしています。
基本的なことかもしれません。
でも、喜びの声が届いても、スタッフルームに貼っておしまいという会社が意外と多いのです(「貼った=伝えた」ということにはなりません)。
古今東西、自分たちが役立っていること、自分たちの存在が喜ばれていることを知ることは、誰にとっても嬉しいことです。
そして、それが価格ではなく、それ以外の部分で褒められているのなら、自分たちが提供している価値に自信がつきます。
誇りを持って仕事ができるのです。
『安売りしない会社はどこで努力をしているか?』大和書房
「安売りするのではなく、価値を上げる」ということは、何も経営や商売だけの話だけではない。
自分を安売りしない、と置きかえてもそれは同じ。
淡々と努力し、自分の価値を上げていけば、いつか必ず、自ら売り込まなくても、まわりからお呼びがかかるようになる。
お笑いの世界でも、実力がないのに自分を売り込む芸人は、ヒンシュクを買うような奇抜で恥ずかしい一発芸で、目立ったり、ウケようとする。
つまり、自分を安売りするしかない。
「自分たちの存在が喜ばれていることを知ること」
自分を安売りしなければ、誇りを持って仕事ができる。 |
|