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2015.1.28

最高の料理


ミシェル・ピクマル氏の心に響く言葉より…

昔々、あるところに、食通で有名な王さまがいました。

その王さまは「食べるために生きているようなもの」と言われるほど、毎日の食事や宴会にこだわっていたのです。

そしたある時、とにかくおいしいものが食べたい一心から、「最高の料理を作ってみせた者に、金貨100枚を与えよう!」というお触れを出しました。

すると、王国屈指の料理人たちが何人も名乗りを上げました。

そこで王さまは、それから二ヶ月のあいだ、日曜日ごとにその料理を食べてまわったのです。

そしてどの料理人のもとでも昼から日没まで延々と食べつづけ、暗くなったころに手帳に評価を書き入れるのでした。

さて、この料理コンクールも終わりに近づいたころ、ひとりの老人が城にやってきてこう言いました。

「コンクールのことを聞きおよび、山奥から出てまいりました。

私が知っているある宿屋では、陛下がこれまで召し上がったことのないようなおいしい料理を出します。

お望みとあれば、この私がお案内いたしましょう」

これを聞いて、王さまがじっとしていられるわけがありません。

さっそくいそいそと白馬にまたがり、この老人に案内させることにしました。

ところがおどろいたことに、老人の馬は勢いよく駆けだすと、そのまま全速力でどこまでも走りつづけるではありませんか。

なんと半日たっても、歩をゆるめる気配さえ見せません。

王さまはこれを必死で追いかけながら、何度も「まだ遠いのかね?」と聞きました。

すると老人はそのたびに、「どうかご辛抱ください。とにかく素晴らしい料理が待っておりますから!」とくりかえすばかりです。

二頭の馬は平原を突っ切り、丘を越え、川の浅瀬をわたり、やがて山道に入りました。

さらに何時間か行くと、やっと峠の上にぽつんと小屋らしきものが見えてきました。

でも、そこからはもう馬では上がれません。

とうとうその小屋にたどりついた時、王さまは汗びっしょりで、文字通りおなかが空いて死にそうになっていました。

「さあ、あと数分のご辛抱ですぞ。すぐかまどに火を入れますから」と老人は言った。

「なんじゃと!」

「ではおまえが料理するのか?助手はおらんのか?皿洗い係はどこじゃ?このわしをだましたのか!」

「まあそうおっしゃらずにお待ちください」

老人は平然と答えました。

「登ってくる途中でキノコを摘(つ)みました。これはおすすめですぞ!」

王さまは開いた口がふさがりませんでした。

こんな無礼な話は聞いたこともありません。

でも、もうおなかが空きすぎて、それ以上腹をたてる元気もありません。

そこで、フライパンがじゅうじゅう音をたてるのを聞き、油のいい匂いがだたよってくるのをかぎならがじっと待ちました。

老人はキノコ入りのオムレツを作っていたのです!

こうしてとうとうオムレツにありついた王さまは、もう手帳を開こうともしませんでした。

評価などつけるまでもなく、それがこれまでで最高の料理だったのです。

なぜなら、王さまは生まれてはじめて本当におなかが空いていたのですから!

『人生を変える3分間の物語』PHP研究所


江戸時代、三代将軍家光が最近何を食べてもうまくないというのを聞いて、沢庵和尚が自分の寺に食事の招待をしたという。

将軍は午前中に寺についたが、昼を過ぎても一向に食事が出てこない。

ようやく夕方になって出たのが、一杯のお茶漬けと香の物。

お腹がペコペコだった将軍は、「こんなうまいものは初めてたべた」と感激したという。

沢庵漬けの由来もここから来ているそうだが、沢庵和尚が将軍に贅沢(ぜいたく)を戒めた話として有名だ。

「空腹こそが最高のご馳走」とはよく言われる話だ。

贅沢になれてしまうと感謝がなくなる、というのと同じこと。

健康にしても、仕事にしても、家族にしても、それがあることが当たり前になってしまうと、感謝がなくなる。

何事も失ってみてはじめて、その有難さに気づく。

日ごろの当たり前に感謝を忘れない人でありたい。


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