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2015.1.27

創造性は年齢では決まらない


茂木健一郎氏の心に響く言葉より…

創造性という言葉を聞くと、どうしても若者をイメージしてしまいます。

もっと言えば、創造性は若者の特権であって、それは年配者にも関係がないものだと。

しかし、実際には、年を重ねても創造的であり続けた人は世界にたくさんいます。

ではなぜ、年配者には創造性がないと思われるのか。

これは、創造力は「体験×意欲」だという方程式を考えればよく分かります。

最初の要素である体験というものは、年を取るごとに増えていく。

20歳の人間よりも60歳の人間のほうが、体験の蓄積が多いのは当たり前のことです。

そう考えれば、年配者のほうがむしろ創造性が高いとも言えるわけです。

ところが、残念ながらそうはいかない。

それは二つ目の要素である意欲が、年を取るにつれて落ちてくるからです。

どうして年を取るにつれて意欲がなくなってくるのか。

意欲を含む感情のシステムが、どのようなかたちで機能しているか。

現代の脳科学で感情というのを一言で表すなら、「生きる上で避けることができない不確実性への適応戦略」ということになるでしょう。

これは、実は普通に生きていれば年を取るにつれて減っていくものです。

たとえば生まれたばかりの赤ん坊というのは、最も不確実性が高い存在だと言えます。

つまり、世の中に対しての知識が全くゼロです。

ハイハイをして、それから立ち上がって、一歩ずつ歩いていく。

目に入るものを手に取ってさわったり、口に入れてなめたりする。

全てが赤ん坊にとっては初めての体験ですから。

何が起こるか自分でも分からない。

そういう状況の中でさまざまなことにチャレンジしているわけです。

実は我々の感情の中には、非常に優れた性質が備わっています。

それは、何が起こるか分からないという状況の中でも、引っ込み思案になることなく、積極的に立ち向かっていくという性質です。

この性質があるからこそ、私たちは次々と新たな体験を脳の中に蓄積していくことができる。

そういう意味で、生きる意欲というものは、先が見えていない、何が起こるかが分からない、どうなるかが決まっていないからこそ湧いてくるものなのです。

不確実性へのチャレンジこそが、脳を活性化させる重要な要素なのです。

しかし、体験や知識が多く蓄積されることによって、不確実性の要素は減っていきます。

不確実性の要素が減ることは、よいことでもあります。

リスクも少なくなるわけですから、よい面もたくさんある。

しかし一方で、面白味がなくなるという面もあるでしょう。

たとえば一度ジェットコースターに乗って、大して楽しくなかったという経験をした人はもう乗らなくなるでしょう。

もっと楽しいジェットコースターがあったとしても、どうせ大したことはないだろうと決めつけてしまう。

乗ってもみないうちに自分で勝手に結論を出してしまう。

そういうものが身の回りに増えていくと、何に対しても興味が薄れてしまう。

新しいことにチャレンジしようという意欲がなくなっていくわけです。

つまりはその人の脳が、もう今までの体験で充分だと判断を下しているのです。

よく、大人になると常識的な考え方になると言われます。

もちろん他人に迷惑をかけるような非常識な言動は避けるべきですが、かといって常識に縛られることはありません。

それも、自分の中で勝手に常識の枠をつくり過ぎて、チャレンジすることを止めてしまったら、創造力はどんどんなくなっていくでしょう。

いくら常識や体験を蓄積しても、それらに囚われすぎるのはよいことだとは思いません。

実は未来のことなど、何も決まっていません。

いくつになっても、世の中には知らないことがたくさんあります。

そういう思いで常に新鮮な見方、考え方をする。

そこから生きる意欲が湧いてくるのです。

年を取っても、不確実なことは周りにたくさんあります。

明日が今日と同じはずはない。

その不確実性を怖がるのではなく、楽しむことでどんどん脳は活性化されていきます。

新しいものに出会うか出会わないかは自分次第です。

出会おうとする意欲があれば、この世界には限りなく新しいものがある。

感動することや、時に涙するようなことにも出会えます。

そしてその新たな感動に、これまでの体験の蓄積を加えれば、そこにはものすごく創造性が生まれる。

決して若い者には生み出せないような、素晴らしいものが生み出させると私は考えます。

『感動する脳 (PHP文庫)』PHP研究所


実は多くの人は、誰もひとしく、「一寸先は闇」であるし、「一寸先は光」であることを忘れている。

人生、何があるかわからない、というのは事実であるのに、今日と同じ明日が続くと思ってしまう。

すると、感動や気づき、好奇心、そして遊びがなくなってくる。

つまり、感じる心という「感性」が弱くなる。

平安時代に編さんされた『梁塵秘抄』(りょうじんひしょう)の中に有名な歌がある。

「遊びをせんとや生まれけむ 戯(たはぶ)れせんとや生まれけん 遊ぶ子供の声きけば 我が身さえこそ動(ゆる)がるれ」

子どもは遊びをするために生まれてきたのだろうか、面白がって遊んだりふざけたりするために生まれて来たのだろうか。

そんな可憐で楽しそうな子どもたちの声を聞いていると、私の気持ちも身体も動いてしまう。

子どもは時のたつのを忘れて遊びに夢中になる。

しかし、大人になると何かに夢中になることが少なくなる。

創造力は「体験×意欲」

どんなに年を取っても、感動や夢中になることを忘れない人でありたい。


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