2015.1.25 |
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目立たぬよう、際立たぬよう |
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浜松医科大学名誉教授、高田明和氏の心に響く言葉より…
自分の成功を皆に知ってもらいたい、そして自分がいかに力があるかわかってもらいたいと思うのは人情です。
しかし、これは同時に嫉妬を生むのです。
「勝つ者は恨みを受く」なのです。
ある人が勝つということは、誰かが負けるということです。
この世には成功する人のほうがしない人よりはるかに少ないのです。
恨む人の数には限りがありません。
自分や家族の幸福を吹聴しないことです。
自分の孫がよい大学に入ったとか、よい家の嫁をもらったなどということを自慢する人がいますが、危険きわまりないことです。
嫉妬してくださいと言っているようなものです。
これが関精拙(せきせいせつ)老師(臨済宗、天龍寺派管長)がおっしゃる、
「うまいものはそっと食え」
の意味するところです。
うまいものを「うまい、うまい」と食べていると、皆が「おいしそうですね」と近寄ってきます。
こちらは、いっそうおいしく感じられますが、集まってきた人はそれを分けてほしがるし、場合によっては奪おうとさえするのです。
この世は人の嫉妬を駆り立ててはひどい目にあいます。
嫉妬は敵意の種です。
多くの人は大人の態度で知らん顔をしていますが、こいつめ、いつの日にかやっつけてやるなどと思って機会をうかがっているのです。
ですから、相手に敵意を持たせない、異常な嫉妬を持たせないことこそうまく生きるこつと言えるのです。
荘子(そうし)は
「直木(ちょくぼく)は先(ま)ず伐(き)られ、甘井(かんせい)は先ず竭(つ)く」
つまり、まっすぐな木は先に伐られ、味のよい井戸は汲(く)み尽くされると言っています。
目立っては危険だというこの格言は現代の私たちにも当てはまるのです。
『心が奮い立つ禅の名言』双葉社
タレントやスポーツ選手に限らず、なんらかのかたちで、有名になりたい、と思っている人は少なからずいる。
しかし、有名になれば、お金や名誉などは手に入るかもしれないが、それと引きかえに、自分や家族のプライバシーがなくなるということでもある。
だから、自分のみならず、家族や親族がほんの少しでも他人や社会に迷惑をかけようものなら、必要以上に叩(たた)かれる。
有名税という名の嫉妬心だ。
自慢したり、偉そうにする人が、嫌われる理由も同じだ。
それが、他人の嫉妬心をかきたてるし、はなはだしければ敵意までも持たれる。
「潜行蜜用 如愚如魯(せんこうみつようはぐのごとくろのごとし)」
という禅の言葉がある。
目立たぬよう、際(きわ)立たぬよう、誰がしたかわからないように、ひそかに淡々と、日々自分のベストを尽くすこそが大事だ、ということ。
誰かに見てもらいたい、つまり有名になりたい、ということは、この「潜行蜜用」の真逆にある言葉。
現代は、Facebookやブログなどで個人の発信がいともたやすくできる時代。
だからこそ、自分の幸福の吹聴やちょっとした自慢は、他人からの嫉妬心を招きやすい。
目立たぬよう、際立たぬよう…
「うまいものはそっと食え」という言葉をかみしめたい。 |
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