2015.1.18 |
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大和言葉を美しく話す |
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高橋こうじ氏の心に響く言葉より…
大和言葉とは、太古の昔に私たちの先祖が創り出した日本固有の言葉。
また、その伝統の上に生まれた言葉です。
「山(やま)」「川(かわ)」「夢(ゆめ)」「ふるさと」、みんな大和言葉です。
日本語の単語は三種類あり、残る二つは漢語と外来語です。
漢語は中国語から取り入れた言葉で、「山地(さんち)」「河川(かせん)」など、つまり漢字の読み方で言えば、音読みで発音されるのが漢語。
訓読みが大和言葉です。
外来語は中国以外から来た言葉で、多くはカタカナ表記です。
たとえば、「はじめる」は大和言葉で、同じ意味の漢語は「開始」、外来語は「スタート」。
私たちはこんなふうに三種類の日本語を日常的に使っています。
大和言葉が日本人の心に染みるのは、日本の風土の中で生まれた言葉だからです。
たとえば、「地面が盛り上がったところ」は、先祖たちにとって「や」「ま」という二つの音で表すのが一番しっくり来るもの。
だから「やま」になりました。
つまり、大和言葉はその一音一音が先祖たちの感性の投影なのです。
たとえば漢語の「故郷(こきょう)」を考えてみても、私たちはその単語を一つのユニットとして認知し、意味を理解するのに対し、大和言葉の「ふるさと」は「ふ」「る」「さ」「と」の一音一音が心に響きます。
大和言葉には、このように「心に染みる」特性があります。
ところが、最近は、造語能力に富む漢語や一見おしゃれな外来語に押されて、長く愛され、用いられてきた美しい大和言葉があまりに使われない、という現象が生まれています。
これは本当にもったいない話。
たとえば、「街で○○さんを見かけたけど、チョー素敵だった」
いまや老若男女を問わず口にする「チョー」。
でも、あまりに頻繁に使われるため、最近は、聞く人の心に響いている印象がありません。
「チョー」と言いたいときには、むしろそれを避けて、別の言葉で言ってみましょう。
一番のお勧めは「このうえなく」。
大和言葉特有の柔らかさと穏やかさを持った言葉です。
人や作品を評価する際に、「このうえなく素敵だった」「このうえなくおいしい」といった形で使ってください。
「それより上のものがない」という意味ですから、要するに「最高に」「最上に」ということ。
漢語では表せない「あふれる思い」が伝わります。
また、「心を打たれた」「感激した」と言いたいときには、より優雅な言い方あるので紹介しましょう。
「いたく」です。
漢字にするなら「痛く」。
つまり、痛みを感じるほど強く心を打たれた、ということ。
友達が親切にしてくれたときなどに「いたく心を打たれた」と言えば、照れくさいほどの深い感謝を表現できます。
もう一つ、「チョー」に代わる言葉を。
「懐かしむ」「愛する」という語の前に、その度合いを強調する言葉をつけたいときは、「このうえなく」よりも「こよなく」が似合います。
「ふるさとをこよなく懐かしむ」「家族をこよなく愛している」言ってみてください。
懐かしさや愛情の奥行きがぐっと増します。
『日本の大和言葉を美しく話す―こころが通じる和の表現』東邦出版
高橋氏は本書の中でこう語る。
「われらがご先祖たちは、日本を『言霊(ことだま)の幸(さき)わう国』と呼んでいました。
言霊が栄えさせている国、ということです。
たとえば万葉集には、柿本人麻呂のこんな歌が収められています。
『しきしまの大和の国は 言霊の幸わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ』
この日本の国は、言霊、すなわち言葉が持つ霊的な力によって幸せになっている国です。
これからも平安でありますように」
日本は、古来より言葉には力があると信じてきた。
大和言葉を美しく使うことは、幸せを招くことにつながる。
言葉の乱れは、心や生活の乱れ。
大和言葉を美しく話したい。 |
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