2014.7.30 |
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トイレットペーパー |
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やなせたかし氏の心に響く言葉より…
人並み外れて不器用である。
こんな仕事をしているから器用だと誤解されがちだが、とんでもない。
何ひとつ満足にできない。
折り紙の鶴が折れない。
靴紐(ひも)が満足に結べない。
本当にお恥ずかしい。
僕以外は家系の中に不器用な人間はいないんですけどね。
絵も非常に不器用な絵で、友人仲間と比較して一番下手である。
線のひきまちがい。
失敗も日常茶飯事で、こんなに長い間仕事しているのに初歩的ミスが多くていやになる。
名人芸なんていうのは全く無関係な世界。
その僕が最近トイレットペーパーの三角折をはじめた。
トイレットペーパーを取りやすいように三角にたたむという簡単な作業。
誰でもできるが、ぼくがたたむときれいな二等辺三角形にならない。
しかしトイレを使用する度に練習した。
あんなもの練習するほどのものではない。
大多数の人はそう思いますよね。
ぼくにとっては、そうではなかった。
正確な二等辺三角形で先端がピシッととんがっている端正な形にはなかなかならなかった。
でも最近時々傑作ができる。
うーん、やった、美しい!
と思ってトイレの中でひとりで感動している。
馬鹿みたいですね(馬鹿ですけど)。
勿論(もちろん)公衆トイレ、ホテルのトイレ等々でも使用後にトイレットペーパーの三角折をする。
便座も拭(ふ)く。
後から使用する人が気持ちがいいだろうと思うとうれしい。
ところで高知新聞を読んでいると山の中の神社に放火したり、町の電飾を破壊したりという記事があって暗然とする。
ぼくは高知県生まれで、土佐人であることにプライドを持っている。
しかしこんな無頼な連中がいるとは信じられない。
恥ずかしくてたまらない。
古い奴(やつ)だとお思いでしょうが、人は人のためにつくし、人をよろこばせるのが最大のよろこび。
たとえばほんのトイレットペーパーの三角折でさえも…。
『人生、90歳からおもしろい!』新潮文庫
詩人の坂村真民さんに、こういう詩がある。
『あとから来る者のために
田畑を耕し 種を用意しておくのだ
山を 川を 海をきれいにしておくのだ
ああ あとから来る者のために
苦労をし 我慢をし みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる あの可愛い者たちのために
みなそれぞれ自分にできる なにかをしてゆくのだ』
あるゴルフ場で、人が使ってビショビショに濡れたトイレの洗面台の上を、一人で黙々と拭いている紳士がいたそうだ。
それを、支配人が見かけ、後ろから声を掛けたところ、なんと、時の総理大臣、吉田茂さんだったという。
あとから来る者のために、小さなことでいい、自分にできる何かをしてゆきたい。 |
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