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2014.7.24

悲劇の主人公


創成館高等学校理事長・校長、奥田修史氏の心に響く言葉より…

私はよく本校の生徒たちにこう話す。

「自分だけ悲劇のヒロイン、ヒーローを気取るな!

生きてる奴は、大人も子供も、みんな重い十字架を背負って生きてんだ!」

一度、親が離婚している境遇にあり、少し素行の悪い女子生徒から、

「親が離婚した子供の気持ちがわるかるか!? 」

と泣きながら言われたことがあった。私は、

「わかるわけねぇだろう!俺の親は離婚してねぇよ、馬鹿野郎!」

と答えた。その女子生徒は一瞬面食らった顔をしたが、私はこう続けた。

「お前、予想外の言葉に驚いてんだろう。

これが俺の本心だ!

神様じゃあるまいし、自分の経験したことないことまでわかるか!

でもな、これだけは絶対に理解しろ!

お前の親が離婚してようがしてまいが、社会に飛び出したら何の関係もない。

社会に出たら、お前個人だけを見て判断される。

乗り越えるしかないんだよ。

お前の幸せな人生は、乗り越えた先にあるんだよ。

乗り越えるというのは、忘れることじゃないぞ。

覚悟することだ。

親が離婚するっていうのは、子供にとっては重い十字架を背負うことになる。

その十字架を背負う覚悟を持つんだ。

俺の親は離婚していない。

でも俺は俺で、重い十字架を背負っている。

生きている誰しもが、重い十字架を背負って生きてるんだ。

顔は笑って、心で泣いて。

みんな歯を食いしばって一生懸命生きてる。

お前のお父さんもお母さんもきっとそうだ。

離婚したからって、子供のことを気にしない親がいるわけないだろう。

だけど、お前もそろそろ覚悟しろ。

お前から憎まれようが一向に構わんが、俺がいま言ったことだけはきちんと頭に叩き込んどけ!」

この話し方は私の話し方である。

もちろんいろいろな考えがあっていいと思うが、私は「情熱をぶつける」こと以外に子供の心を揺さぶる方法はないと考えている。

何とか理解してほしいという、祈りにも似た感情がそこにあることだと思う。

『ヤンチャ校長、学校を変える』宝島社


よく、自分の受けた悲惨な体験は、のうのうと生きている幸せな人にはわからない、と言う人がいる。

悲劇のヒロイン・ヒーロー、つまり悲劇の主人公を演じてしまうような人だ。

世界一かわいそうな私に、同情してほしいとか、一緒に悲しんでもらいたい、と。

だが、世界を見渡せば、その人より悲惨な体験をしている人は、何万人、何千万人といるはずだ。

不幸自慢をしたり、不幸を愚痴ったりすれば、幸福になれるなら何度も言えばいい。

しかし、愚痴や泣き言や不平不満は、言えばいうほど気持ちは暗くなり、不幸は加速する。

人生において大きな困難が起きたときは、そのことだけに目がいって、一瞬、他の広い世界が見えなくなってしまっている。

「人生はクローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇」(チャールズ・チャップリン)

どうせ生きるなら、悲劇ではなく、喜劇の主人公として、面白おかしく人生を演じたい。


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