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2014.7.12

臆病なコオロギの強さ


田村耕太郎氏の心に響く言葉より…

『臆病なコオロギの強さ』

今や世界中のリーダーが愛読している『孫子の兵法』。

この書こそ無駄な戦いを避ける極意の集大成だ。

その中に、

「敵の10倍の戦力であれば、敵を包囲すべきである。

5倍の戦力であれば、敵軍を攻撃せよ」

とある。

戦いの場では相手の5倍の力がついて初めて好戦的になってもいい。

勝ち目のない戦いには臨まず、圧倒的に勝てる態勢を作って、できたら戦わずに勝つのだ。

これが実践されているのが、実は動物の世界である。

彼らの世界では強い者が生き残るという考えがある。

しかし、これは大きな間違いだ。

正しくは、「環境に柔軟に対応する者」が生き残る。

同じ種の中で体が大きく戦闘的な者が生き残るわけではないのだ。

下手に知恵がある人間より彼らの方が賢明なのかもしれない。

コオロギを使った実験で興味深いのが、臆病で戦いを避ける者が、戦闘的な者より生き残る確率が高いこと。

むやみやたらに戦わず、体力を温存して、健康体を保っているものが生き残り、メスとの出会いをつかみとり、子孫を残す可能性が残されているのだ。

縄張りや異性を巡る戦いで、戦闘的で用心深さがない個体は、戦いすぎて疲弊してしまう。

戦いに明け暮れているときに、無傷でより若くより体力のある個体の挑戦を受けることになってしまうのだ。

また、チンパンジーなどの高等な動物の群れでは、人間と同じようにその個体は目障りだと思われ、ほかの個体から集団リンチにあって殺される場合もある。

アグレッシブな人間が多いと思われている欧米では、過剰に戦闘的な人間の評価は芳(かんば)しくない。

ハリウッド映画の中で、さまざまな業界で活躍する主人公たちが激しくライバルや上司と衝突するシーンがあるが、現実では珍しい光景だから映画やドラマで取り上げて表現しているのだ。

自己主張が激し過ぎる人やすぐに感情的になる人は、ビジネスパーソンとして未熟という烙印を押される。

むやみに戦わないほうが、人生というサバイバルレースでいい結果を生むことがあるのは、動物の世界でも人間の世界でも一緒なのだ。

『頭に来ても アホとは戦うな!』朝日新聞出版


孫子の兵法の有名な言葉に次のようなものがある。

「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」

百回戦って百回勝つというような連戦連勝は最善の策ではない。

戦わずして敵を降服させることこそが最善の策である。

現代は、SMSなどで無名の攻撃を仕掛けてくる人はあとを絶たない。

しかし、そのことにイチイチ反論したり反応していたら、相手の思うつぼとなり、一つも得をすることはない。

無用な戦いは避け、そのことには関わらない、相手にしない、という大人の対応が結局は傷口を広げずにすむ。

くやしいから相手を論破し、ぎゃふんと言わせてやろう、というのは自分の自己満足に過ぎない。

その一瞬の口惜しさを通り過ぎれば、あとはなんとかなるし、その大人のやり取りを多くの良識ある人が見ていてくれる。

戦いは最後の最後まで避けることが賢明だ。


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