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2014.5.9

逆境に笑う


将棋の米長邦雄氏の心に響く言葉より…

私の場合は、勝てば褒められ、負けると叩かれる。

そういう世界で生きてきたから、叩かれても大丈夫なように精神的にタフになるしかないですね。

負けると必ずマスコミに悪口を書かれるんです。

女性問題とか金の問題とか。

でも、しょうがないと思うしかないですよ。

人生というのはそういうもんだ、世間の評価とはそういうもんだ、と。

要するに、負けたのが悪いんです。

勝てば褒められるのですから。

逆にいうと、私がいくら品行方正にまじめに将棋を指していても、それを褒めてくれる人は誰もいませんよね。

それと、逆境のときは笑うことなんです。

これは非常に大事ですよ。

将棋で負かされるは、人に悪口を書かれるは、今まで親しくしていた人まで手のひらを反すようになるは、という状況ですからね。

癪(しゃく)に障(さわ)るじゃないですか。

そういうときに怒ったり、ひがんだり、腐ったりするのが人間の常だと思います。

でも、そうすると余計だめになってしまう。

だから、笑うんです。

また、笑うためには、その前に無心になることが大事です。

たとえば、胃のあたりに何か引掛かりがあると、「胃癌になっているんじゃないか」と心配になりますよね。

そういう状態ではなかなか無心にはなれないし、人がみんな笑っていても笑えません。

わだかまりがないという状態になることが大切ですね。

一度自分をそういう状態に置いて、そして笑う。

寄席に行って落語を聞いてもいいし、水戸黄門を見てもいい。

スランプのときは本業から一回離れることだといいましたが、これは逆境のときも同じです。

逆境のときに、まじめに本業をやった人はだめになります。

だから、本業から一回離れて、無心になって笑うことです。

『生き方の流儀』(渡部昇一・米長邦雄)致知出版社


「笑い」は「肯定」だと言われる。

その逆に、「怒り」は「否定」だ。

だから、怒ったり否定しながら笑える人は、この世にはいない。

特に、バカになって「ワッハハ」と大笑いする呵呵大笑(かかたいしょう)は、すべてを受けいれる全面肯定だ。

逆境にあるときにも、笑いがある人は余裕がある。

余裕とは、自分に起こった逆境を客観的に見ることができる、ということ。

つまり無心の状態だ。

逆境に笑える人でありたい。


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