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2014.4.13

心が先行する


哲人、中村天風師の心に響く言葉より…

心を強くするには体を強くしなければ駄目だ、という考えがある。

「健全な肉体にあらずんば、健全な精神宿る能(あた)わず」。

よくない言葉だよ。

もしも健全な肉体でなければ健全な精神が宿らないならば、体の丈夫な奴は、みな心が強いはずであります。

ところが真理は厳粛です。

その体てぇものは、心が強くなければ決して強くなれない。

心をおっぽり出しておいて、心はどんなに神経過敏でも、肉体だけがどんどん強くなるてぇことは絶対にない。

健全な肉体は健全な精神によって作られるのであって、健全な肉体によって精神が作られるのではない。

もうひとつ千歩ゆずって、体が強ければ心が強くなるとしましょう。

そんな心が頼りになりますか。

なぜかというと、体の強い間だけの強い心だもの。

体が弱くなってしまうと、心も弱くなってしまう。

そんな心ならあってもなくても同じじゃないか。

ふだん、つね日ごろ、なんでもないときにはなんでもなくてよいのであります。

体が丈夫で、どこもどうもないときには、心が弱くても強くても関係ない。

病や運命の悪くなったときに、それに負けない、打ち負かされない、しいたげられない強さと尊さをもった心がほしいのです。

その心は体をあてにして作ったのでは作られません。

肉体を自分だと思って人生に生きると、そらもう、人が気づかない恐ろしい影響が余儀なく我々の命の上に働きかける。

それは何だというと、肉体を自分だと思って生きていくと、命の生きる力が衰えてくるんですよ。

だから、まず何をおいても、第一に肉体を自己と思うような間違いは厳格に訂正しなきゃいけませんよ。

今ではお腹がいたかったりなんかすると、「ああ、私が痛い」と、こう思っていただろ。

「私が痛い」という思い方を、今度は天風式にこういうふうに考える。

お腹が痛いときにだね、第三者のお腹が痛いと同じような気分になってごらん。

自分以外の人のお腹が痛いのと同じように、「今、俺の命を生かすために使う道具である肉体のお腹のところが痛いんだ。私が痛いんじゃない。私が生きるために必要な道具のお腹が痛い」と思えばいいんだよ。

今までは洋服にほころびができると、あなた方自身にほころびができたように思っただろ。

ブラウスの背中のところに穴が開いたとしたら、「あっ、背中に穴があいちゃった」と思う。

そうじゃない。

それは着てる洋服に穴があいたんだから。

繕(つくろ)えばいい。

というふうに、肉体も客観的に考える余裕をもたなきゃいけないのよ。

『ほんとうの心の力』PHP研究所


天風師は、「悲しいことやつらいことがあったら、いつにも増して、笑ってごらん」という。

つまり、先に「笑う」から、笑うような出来事がやってくる、ということ。

嘆き悲しめば、嘆き悲しむことがずっと続く。

同様に、病気などで、「痛い」とか「辛い」と言えば、その痛さや辛さが軽くなるなら大いに言えばいいが、決してそうはならない。

先に笑うと笑うようなできごとが起こるのと同じように、先に心を健全にすることが、健全な肉体をつくることになる。

全てのものごとは、心の作用が先行する。

「心の中で思っていること、考えていることが、すべてを創り出している」(中村天風)

つらいときこそ大声で笑ってみたい。


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