2014.4.9 |
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腹を凹ませる |
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哲学者、小川仁志氏の心に響く言葉より…
たとえば、私は初めて哲学を学ぶ人に講義する時、コペルニクス的転回を狙って哲学とは関係のない問いかけを始めます。
「みなさん、なんでおばけが怖いか、わかりますか?」
小難しい哲学の講義を聞かされると思っていた生徒たちは、一瞬、きょとんとします。
しかし、徐々に質疑応答、議論は盛り上がり、最終的に生徒たちは「よくわからないから、怖いのだ」という仮説にたどり着きます。
そこで、私は「そう、正体がわからないから怖いんだ!」と言った後、話を哲学へと持ち込むコペルニクス的転回を行います。
「じつは哲学はおばけの正体を暴く学問だ」と伝えるのです。
たとえば、私たちは「なんでうまく生きられないか」と悩みます。
それは物事の本質がわからないからです。
逆に言えば、物事の正体がわかれば、もっとうまく生きられるようになるはずです。
そのために哲学を学ぶわけです。
つまり、哲学を学ぶと、人生の悩みとうまく向き合うことができるようになるのです。
このように話すと、生徒たちは「なるほど、おばけについての議論と同じか」と、関心を持って哲学の講義に耳を傾けてくれます。
意外性のある出発点から、伝えたい本質へと導いていく。
このコペルニクス的転回の手法は、企業の研修にも取り入れられています。
アルバイトの教育に定評のあるディズニーランドでは、ゲストへの対応方法の基礎として「腹を凹(へこ)ませろ」と教えるそうです。
正しい敬語の使い方でも、話術でもなく、腹を凹ませろなんて…。
研修を受ける新人たちは、「何事か?」と集中力を高め、講師の伝えたい内容を理解しようとします。
これがインパクトのある言葉による意外性の効果です。
どんな状況でも話を聞く人は、サプライズを求めています。
誰が最初から最後までわかりきった話を聞こうなどと思うでしょうか。
「腹を凹ませろ」の狙いは、姿勢を良くすることにあります。
ゲストと対面する時には姿勢良く迎えたい。
そんなディズニーの考え方を実践する言い回しなのです。
その効果のほどは、あなたが今この瞬間、腹筋に力を入れて腹を凹ませてみればわかります。
自然と背筋が伸びたのではないでしょうか。
これこそ、姿勢良くゲストを迎えてくれるディズニーランドのキャストたちの秘密です。
天動説から地動説とまではいかないものの、状況に応じたサプライズは伝え方を高める力を発揮してくれます。
【こう考えれば話は一瞬で面白くなる!】青春出版社
小川仁志氏は、話がうまい人、伝わる話し方のできる人、話術に長けた人に共通しているのが、3つのリズムだという。
それは、「ツカミ」、「メリハリ」、「オチ」。
最初に意表をつくような話題を出せば、「ツカミ」はうまくいく。
そこにサプライズという驚きがあるからだ。
今まで散々聞かされてきたようなありふれた話題でさえ、別の視点から見たサプライズな表現があれば、聴衆の心をグッとつかむことができる。
その達人が、小林正観さんや、斎藤一人さん。
一人さんは、自分の子どもや身内の相談にくる人に「まず、自分が幸せになることが大事」と言う。
自分が、明るく、楽しそうに外に出かければ、たとえば引きこもりの子どもにも、外に出ると楽しいことがある、というメッセージを与えることができる。
一緒になって、深刻になり、不幸になっても何の解決にもならない。
「腹を凹ませる」ことは、姿勢を正しくする、ということ。
意表をつく素敵な言葉は、相手の心にストンと落ちる。 |
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