2014.4.4 |
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他人に配慮できる人は運がよい |
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脳科学者、中野信子氏の心に響く言葉より…
運の良い人、悪い人、という考え方があります。
「運」というと、占いのたぐいを連想させ、およそ非科学的な印象を与えるかもしれません。
しかしいま、「運」というというものの正体を科学的アプローチで解明しようとする試みが進んでいます。
近年、京都大学の藤井聡教授が、心理学的アプローチから「運」の正体に迫(せま)った、「他人に配慮できる人は運がよい」という論文を発表しました。
これは、「認知的焦点化理論」というものを用いた研究です。
「認知的焦点化理論」とは、かんたんに言えば、「人が心の奥底で何に焦点を当てているか?」によって、その人の運のよし悪しまでが決まってくる、という考え方です。
藤井教授の研究で、「利己的な傾向を持つ人々の方が、そうでない人々よりも、主観的な幸福感が低い」ということが明らかになりました。
利己的な人ほど、自分は幸福でないと思ったり、周囲の人々に比べて不幸だと思う傾向が強い、という結果が示されたのです。
「認知的焦点化理論」では、どのくらい遠くの他人、そして遠くの未来のことまで配慮できるか、ということを「配慮範囲」という尺度で表します。
人の心の「配慮範囲」には、「関係軸」と「時間軸」があります。
関係軸とは、家族→親戚→友人→知人→他人という順に、心理的な距離がだんだん遠くなっていく社会関係のこと。
時間軸とは、現在→数日先→自分の将来→社会の未来という順に、思いを馳せる時間的範囲が広がっていくこと。
自分から離れれば離れるほど、範囲が大きくなります。
これが「配慮範囲」です。
利己的で自分のことしか考えず、目先の損得にしか関心がない人は、配慮範囲が狭い人です。
逆に、他人や遠い将来のことまで思いを馳せることができる人は、配慮範囲が広くなります。
藤井教授の研究によれば、配慮範囲の狭い利己的な人は、ある程度までは効率よく成果をあげられるものの、目先のことにとらわれて協力的な人間関係を築けないため、総合的にみてみると、幸福感の感じられない損失が多い人生となる、とのことです。
逆に、配慮範囲の広い利他的な志向を持つ人は、よい人間関係を持続的に築けるため、自分の周囲に盤石(ばんじゃく)なネットワークをつくることができます。
言いかえれば、周囲のみんながこぞってその人を助けてくれるわけです。
こうしてみると、よりたくさんの範囲の人、より遠い未来のことまで配慮できる人ほど運がよい、というのも、ごくあたりまえのことに思えてきます。
『脳科学からみた「祈り」』潮出版社
ゴルフの 最終日のプレーオフで、相手がパットを外せば自分の優勝が決まる場面で、タイガー・ウッズは「入れ!」と念じた。
最高のパフォーマンスを出し切った相手に勝ってこそ、それが心からの喜びとなるからだ、という。
一流の選手は、相手の失敗を願うこと、あるいは呪うことは、結局は自分にそれが返ってくることを知っている。
競技相手は、配慮範囲で言えば、敵という自分から最も遠いところにいる人だ。
その相手の幸運を願うことこそ、これ以上ない大きな利他の心だ。
自分の苦手な人や、嫌いな人に感謝するというのも同じ。
「よりたくさんの範囲の人、より遠い未来のことまで配慮できる人ほど運がよい」
より広い心を持った利他の人でありたい。 |
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