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2014.3.25

どんな状況になっても、やり続ける


やなせたかし氏の心に響く言葉より…

この世界は「運・鈍・根」なんです。

ですから「運」がよくなくっちゃいけない。

そしてあんまり器用に、何でも簡単にできるっていうんじゃなく、いくらか「鈍」であって。

それからあと大事なのは、「根」。

つまり、根気よくやらなくっちゃいけない。

それがあれば、どんな人でも、ある程度のところまでいけるんです。

満員電車に乗っていても、いずれ席は空く。

自分の座る席が必ずどこかに空くんで、その時、座ればいいんです。

「運」は、自分でつかまなくちゃいけない。

このつかむということは、例えば漫画を描いているとすれば、仕事がこなくても、絶えず描いていなくちゃいけないんです。

そうしないと、運は巡ってきません。

やめてしまえば、そこで終わり。

必ず続けていなくちゃいけない。

すると、何かしら運というのはやってくるんです。

その時に、パッとつかむんです。

ただ、つかむためには、自分がやり続けていないといけない。

あるバレエの評論家が、「やなせさん、私はこの頃仕事がすっかりなくなって、いったいどうすればいいでしょう」って聞いてきた。

僕は「それはねえ、あなたにとって、とてもいいんじゃないですか。いま、時間がたくさんあるでしょう。それを一生懸命やればいいんですよ」と言ったんです。

それから二年くらい経って、その人に会ったんです。

「やなせさん、ありがとうございました。じつは言われた通り、私は仕事じゃなしに、やり残していたバレエの研究を始めたんです」って言うの。

すると、その研究をやっているうちに、仕事がどんどんくるようになったって。

そういうもんなんですね。

つまり、やっている人のところには、なぜかくるんだ。

何もしてない人のところにはきません。

困ったと言っているだけじゃ、何も始まらない。

絶えず、自分がやっていないとダメなんです。

どんな状況になっても、やり続ける。

その場を楽しむように。

それと根気なんだよね。

やっぱり、根気がないとダメなんだ。

僕はもっと若い頃に世に出たかったんです。

ただ遅く出てきた人というのは、いきなりダメにはなりません。

こんなことをしていていいのかと思っていたことが、みんな勉強になり、役に立っていく。

人生にムダなことなんて一つもないんですよ。

『何のために生まれてきたの?』PHP研究所


やなせたかし氏は1919年生まれ。

1973年に代表作である「あんぱんまん」の絵本を出版したが、1988年にテレビでのアニメ放映が始まったのをきっかけに大ブレイクした。

世に出たのは、長い長い下積みの時代を乗り越えた、69歳の時だった。

鈍(どん)の反対は、鋭(えい)。

才能があって理路整然として、目から鼻に抜けるような人は、自分がなまじできるため、人に対して見下してしまったり、舌鋒も鋭(する)くなりがちで、まわりからみると冷え冷えとして見えることが多い。

鈍の人は、愚拙(ぐせつ)と言われるように、時にボーとしてまるで愚か者のようだが、なんとも言えない、不器用な魅力があり、温かみがあって、人から好かれる。

たとえ、不遇の時期にあっても、一事を長く続けることは、その間、運をためていることになる。

どんな状況になっても、やり続ける人に、やがてチャンスが巡ってくる。


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