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2014.2.16

仕事が道楽

本田静六氏の心に響く言葉より…

人生の最大幸福はその職業の道楽化にある。

富も名誉も美衣美食も、職業道楽の愉快さには遠く及ばない。

職業の道楽化とは、学者のいう職業の芸術化、趣味化、遊戯化、スポーツ化もしくは享楽(きょうらく)化、であって、私はこれを手っ取り早く道楽化と称する。

名人と仰がれる画家、彫刻家、音楽家、作家などが、その職業を苦労としないで、楽しみに道楽としてやっているのと同様に、すべての人がおのおのその職業を、その仕事を道楽にするということである。

職業を道楽化する方法はただ一つ勉力(べんきょう)にある。

あらゆる芸術と同じく、はじめの間こそ多少の苦しみはあるが、すべての歓喜も幸福も努力を通してはじめて得られることを自覚し、自分の職業を天職と確信し、迷わず専心努力するにおいては、「断じて行えば鬼人も之を避く」とか、「精神一到(いっとう)何事か成らざらん」といわれるとおり、いずれ必ず仕事がよくわかってきて上手になる。

上手になるに従い、はじめは自己の性格(しょうぶん)に適していなように思われた職業も、しだいに自分に適するようになり、自然と職業に面白味を生じる。

一度その職業に面白味を持てば、もはやその仕事は苦労でなく道楽に変わる。

かつて渋沢栄一翁が、埼玉県人会で、私がこの職業道楽説を述べた後に立たれて、

「若い時自分の故郷に、阿賀野(あがの)の九十郎という七十余になる老人があって、朝から晩まで商売に励んでいたが、あるとき孫や曾孫(ひこ)が集まり、おじいさん、そんなに働かないでも、家(うち)は金も田畑も沢山できたのだからどうか伊香保(いかほ)へでも湯治(とうじ)に行って下さい、とすすめたところ、

九十郎のいうには、俺の働くのは長年の癖で、まるで道楽なのだ、いまさら俺に働くなというのは、俺に道楽をやめろというようなもので、親不孝なやつらだ。

それにお前たちはすぐ金々というが、金なんか俺の道楽のかすなんだ、と言われたが、青年諸君は、本田君の説にしたがって、盛んに職業道楽をやられ、ついでのその道楽のかすも沢山ためるように」と説かれたことがある。

何事かに成功された人はきっとなるほどとうなずかれるにちがいない。

いやしくも、成功した人は決してその職業を月給のためや、名誉のためだけでやってきた人でなく、必ずやその職業に趣味(おもしろみ)を持ち、道楽的に励んだ人に相違ないのである。

『本田静六 成功するために必要なシンプルな話をしよう』知的生き方文庫


本田静六氏は、サラリーマンでも、商人でも、学生でも、お百姓でも、その他いかなる職業でも、少し努力を続けさえすれば、必ずその職業に趣味を生じ、道楽化することができる、という。

どのような単調な仕事でも、長く続けると、そこに面白味を見出すことができる。

「この世に継続に勝るものは無い。才能も、教育も、継続に勝ることはできない。継続と決意こそが絶対的な力なのである」(クーリッジ・第30代米国大統領)

継続は、凡人が天才や秀才に勝てる唯一の方法だ。

傍目(はため)にはどんなにつまらない仕事に見えようとも、それを何年、何十年と続けることにより、その道のプロとなることができる。

そして、続けることにより、そこに面白味や楽しみを見つけることができる。

つまり、味がわかる粋な大人になれる。

仕事が道楽、と言える人でありたい。



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