2014.2.6 |
|
三つの上下関係
|
|
小林正観さんの心に響く言葉より…
一般社会の中で、一般的に、上下関係が存在すると認められている人間関係が、三種類あるように思います。
一つは親子、一つは上司と部下、もう一つは先生と生徒、の関係です。
いずれの関係も、「ある概念」があれば、行きづまることなく、スムーズに流れていきますが、それがかけている時、人間関係は、うまくいかなくなる、との「ある概念」があるようです。
その、ある「概念」とは「尊敬」というものです。
基本的に、親は子に、上司は部下に、そして先生は生徒に対して、指導的で優位な立場にあり、それを社会全体が認めています。
しかし、それだけでは、人間関係はスムーズに流れていきません。
そこに(上下関係の)上に立つ方の人間が、下の人間から「尊敬される」という概念が存在すれば、その人間関係は、非常にスムーズに進んでいくのです。
しかし、上に立つ人が、尊敬されるような人格を持っていない場合、その人間関係は、かなりの確率で行きづまって行きます。
例えば親は、親というだけで、子供に対して威張ってはいないでしょうか。
上司は、上司というだけで、部下に対して偉そうにしていないでしょうか。
先生は、生徒に対してむやみに威張ったり怒鳴ったりしていないでしょうか。
上司と部下のことで言うならば、仕事ができる上司であるのはもちろんですが、部下の失敗に対してもなじったり(感情的になったり、威張ったり)しない、そういう人格上の忍耐強さや柔らかさ、寛容さ、というものが「尊敬」の対象になります。
怒鳴ったり、怒ったり、声を荒げたりすることで、「尊敬」を勝ち得ることは、絶対と言って良いほどありません。
忍耐強く、いつもにこやかで、誰に対しても同じ態度で接する(例えば、出入りの業者に対しても、上司や部下、男子社員や女子社員に対しても、区別することなく同じ柔らかさ、優しさで接する)、そういう人格を身につけている人は、尊敬されるのです。
尊敬される上司の部下は、よく働いてくれます。
これまで述べてきたのは、上下関係の「上」の立場の人についてですが、同じことが「下」の立場の人にも言えます。
ある大学生が私に相談をしてきました。
自分のやることに、親が常に口出しをしてきてやりきれないので、家を出て、アパート住まいをしたい、ということでした。
私は、「独り暮らしをすること自体は、独立心や責任感を養う、という意味で、プラスになると思います。
が、あなたよりも人生経験が豊かな親御さんが、いつまでも細かいことを言い続けるというのは、必ず訳があるのです」と言いました。
その大学生に、私はいくつか質問しました。
「大学時代に、何か資格を取りましたか」、「親御さんが及ばないようなジャンルの勉強を、何かしていますか」、「自分の分野で『これには私はとても詳しい』というものがありますか」…と。
その答えは全て「NO」でした。
私は苦笑いをして、「それでは親御さんが心配するのも当然でしょうね」と言いました。
「親が子供に対して口うるさい」というのは、もちろん、親の方に(口出しする、という人格上の)問題があるかもしれません。
しかし、それと同時に「親からそのように言われてしまう自分」という存在も、やはり考えてなくてはいけないものではないでしょうか。
何か一つでも、親には及ばないようなジャンルを持つこと。
そういう勉強や研究を続けている“姿”を見せることで、いつか親はわかってくれるでしょう。
そうすれば「口うるさい言葉」も、次第に少なくなっていくはずです。
「上下関係」の間に、「お互いに尊敬する気持ち」があれば、あるいは、互いに「尊敬される存在になろう」との気持ちがあれば、多くの問題が解決して行くような気がします。
『心の遊歩道』弘園社
「リーダーは尊敬されるが、必ずしも好かれるとは限らない」(ピーター・ドラッカー)
ただ人から好かれようとする人は、決して尊敬されることはない。
尊敬されるリーダーは、時に、耳に痛いことも、厳しいことも言うからだ。
尊敬されない人に限って、自分の地位や年齢の高さを勘違いして、威張ったりする。
尊敬とは、にじみ出るものであり、別れてからまた会いたいと思わせる余韻(よいん)や魅力を持っていること。
また逆に言うと、子どもや生徒や、部下の立場にある人にとっても、親や先生や上司に好かれる努力をすることが必要だ。
まわりが悪いと、人のせいにし、文句ばかり言っていては成長はない。
尊敬に値(あたい)する人間でありたい。 |
|
|