2013.12.3 |
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メリーゴーランド
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橋本昌人氏の『なみだのラブレター』の中から、心に響く言葉より…
『結婚を控えた娘に』
いよいよ来月、結婚するんやね。
おめでとう。
ジューン・ブライドに憧れていたはずやのに、きみは結局、お母さんの旅立った8月を、式の日に選びました。
あなたの母親であり、私の妻であった、我々の最愛の女性は、ある、小さな記事として新聞にも掲載された交通事故により、きみがまだ6歳の時に亡くなりました。
突然すぎて、悲しみ抜いて、途方に暮れて、精神的に参ってしまった私は、死のうとしたんです。
バカなことに、きみを連れてお母さんを追いかけようとした。
その日、最後の思い出にと、家族でよく出かけた遊園地に2人で行きました。
君は嬉しそうに、はしゃぎ回った。
いつも家族で乗ったメリーゴーランドにひとりで乗るきみを、私は精いっぱいの笑顔を作って、だけど力なく手を振って、きみが「お父さーん」と呼ぶ声に必死で答えていました。
とにかくきみは楽しそうで、これが最後の遊園地になることも知らずに、いや、今日が最後の日であることも知らずに、元気いっぱいに走っては、乗り物をハシゴしてた。
きみが楽しげであればあるほど心は痛んで、でも、心が痛めば傷むほど、必死で笑顔を作るようにしました。
やがて急流すべりを乗り終わって、こちらに駆けつけてきたきみは、満足げな表情で見上げつつ、私と手をつないで、ニコニコしながらこう言いました。
「もういいよ、お父さん。
もう、お母さんのところに行こ」
きみは気づいていたんやね。
きみを抱いたまま、ムリヤリ、父親の私がこの世を去ろうとしていたことを、なぜか知っていたんやね。
この言葉で、私はハッと目が覚めました。
私はこんなことを言った。
「あほ!
お母さんに怒られるぞ、ミサト!
いつか、お母さんがゴハン作って待ってるのに、迎えに来てくれたオマエと駅前の焼鳥屋に寄り道した時みたいに、『そんな勝手なことするんやったら、二人で出て行きなさい!』って、お母さんスネるぞ!
スネたらひつこいぞ〜!」
こう言うときみは…、お葬式の日以来、お母さんのことでは全く泣かなかったミサトは、セキを切ったように大きな声で泣きだしたね。
24年前のあの日のことを、きみは憶えていないと言います。
でも、きみに子供が、そう、私とお母さんにとっての孫ができて成長したら、あの遊園地にみんなで行こう。
お母さんの分も入場券をちゃんと買って、みんなでメリーゴーランドに乗ろう。
そしてみんなで、思いっきり笑おな。
ミサト、本当におめでとう。
(滋賀県・60代男性)
『なみだのラブレター』ヨシモトブックス
ぐちをこぼしたっていいがな
弱音を吐いたっていいがな
人間だもの
たまには涙をみせたっていいがな
生きているんだもの
(」相田みつを)
人にはときとして、到底乗り越えられないような悲しみがやってくることがある。
そんなときは…
思いっきり泣いたり、ぐちをこぼしたり、弱音を吐いたっていい。
悲しみの底まで落ちて、そして、それを乗り越えてきた人は、ひかり輝いて見える。 |
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