2013.11.30 |
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もっとも苦手なタイプ
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五木寛之氏の心に響く言葉より…
先日、ある雑誌のインタヴューアーから、
「五木さんがもっとも苦手(にがて)とするタイプの女性は、どういう女性ですか」
という質問を受けました。
これはなかなかむずかしい。
ちょっと考えると簡単に答えられそうで、じつはあらためてふり返ってみると返答に窮(きゅう)するところがあります。
しかし、なんとか質問に答えねばならないので、ふと思いついたことをしゃべりました。
「ぼくは〈よろこび下手(べた)〉な女性が苦手です」と。
〈よろこび下手〉とか、〈よろこび上手(じょうず)〉とかいった言葉があるのかどうかは知りません。
しかし、ぼくの言わんとする感じだけはわかっていただけると思います。
ぼくの友人の母親に、こんなタイプの女性がいました。
息子である彼が、親孝行のつもりで有名な観光地へ案内する。
まあかりに西伊豆あたりのひなびた温泉地だとしましょう。
「どうです、ほんとうに静かでいいところでしょう?」
と、ふだんは親不孝な息子が殊勝(しゅしょう)な口ぶりで感心してみせる。
すると、その母親は必ずこんなふうに応ずるんだそうです。
「そうね。ここもわるくないけど、わたしは湯布院(ゆふいん)のほうがもっと静かでいいと思うわ」
本当はうれしいんですね。
息子のたまさかの優しさに心は感謝で一杯なくせに、そういう場面になると素直によろこぶことができない。
「ほんとうにすてきね!うれしいわ」
と、心の中ではつぶやきながら、それが言葉に出てこない。
これはひねくれているわけでもなんでもないのですね。
ただたんに照れているだけなのです。
つまり、〈よろこび下手〉。
『生きるヒント』Gakken
最悪のいじめは、「無視」という存在の否定。
最高のよろこびは、「共感」という存在の肯定。
共感とは、素直に喜べること。
喜ぶのが上手な人と一緒にいることほど、楽しいことはない。
誰だって、自分のことを認めてもらいたくてウズウズしている。
喜び上手な人は最高に魅力的だ。 |
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