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2013.11.15

合格を目標としない塾

小林正観さんの心に響く言葉より…

塾をやっている方に、私は、「これからは、こういうふうにしたらどうですか?」という提案をしました。

「受験に成功すること、高校に合格させることを、塾の目的としない」

「えっ」と彼は、不思議そうな顔をしました。

勉強させるためにやっている私塾で、勉強をしないこと、合格させることを狙いとしないこと、それを目標としようというのです。

ありとあらゆる人が、「えっ」と言い、不思議そうな、怪訝(けげん)な顔をするのはあたりまえのことです。

「世の中には、思うようにいかないことがたくさんある。

挫折とか失敗とか、一般に言われる現象はたくさんある。

そいういうものが、これからの人生に待ち構えている。

高校受験に成功する場合もあるし、失敗する場合もある。

その先に、今度は何かの運動部で県大会に出られる、出られないとか、予選で敗退するとか、そういうことも多々ある。

大学受験で、思うようにいかないで挫折することもある。

好きな人から嫌われて失恋することもある。

希望していた会社に勤めることができなくて、挫折を味わうことだってある。

人生にはいろいろなことがたくさん待ち受けている。

そいうことを教え込み、そういうときになってもいちいちめげる必要はない。

たくさんの道が残されていて、それを自分が不運だ、不幸だと嘆くのではなく、そういうシナリオであり、そういう出来事もあるのだから、それに一喜一憂せず、強く、たくましく、打たれ強く、挫折にめげないで生きていくことも人生なんだ。

むしろ、『受験を一所懸命がんばって合格をめざす、そのための勉強を教える塾』というより、『挫折を味わっても絶対にめげない生徒を作る塾』というほうが、本当は重要なのではないか」

そんなふうに、私はその先生に申し上げました。

この話は、学校教育や、家庭教育と同じように、東洋的な治療の現場で応用ができそうです。

というのは、西洋医学によっては治療ができない、あるいは見放されたという病気もあることでしょう。

東洋医学に頼って、なんとかならないかと考える患者さんもいるわけです。

そういう患者さんに、東洋医学の先生は、「治らないこともあるよ、治らないことも受け入れて、その残された年月を笑顔で生きていくという考え方もありますね」ということを教えてあげられる立場にあるかもしれないのです。

「がんばってがんばって、なんとか病気を克服しましょう」という考え方を教えることもひとつの強さとしてあります。

しかし、そういう病気に対して、「がんばって、絶対この病気をクリアするぞ」という考え方ではなく、「めげない、落ち込まない、それを笑顔で受け入れ、そして、淡々と生きていくという考え方もひとつあるんですよね」と教えられるのが、東洋医学で治している立場の人のできることかもしれません。

東洋医学の先生は、患者さんに対して、「乗り越えましょう」「がんばりましょう」「克服しましょう」と言うだけでなく、別のもうひとつの強さを、患者さんに提示することができます。

病気について、いちいち落ち込まないこと、いちいちめげないこと、一喜一憂しないこと。

良くなったとか悪くなったとか一喜一憂するのではなくて、めげずに、笑顔で淡々と受け入れながら生きていく。

そいう「強さ」を教えてあげるのも、東洋医学の先生たちの役割のような気がします。

『笑顔で光って輝いて』実業之日本社


負けるジャンケンをすると、たいていの人はそれができない。

いつも勝つジャンケンしかしてないからだ。

ジャンケンに限らず、学校も、会社も、社会も、いたるところで行なわれているのが、勝つための競争。

勝つための練習はするが、負ける練習はしたことがない。

現代人は負けることになれていない。

だから、ちょっとでも、負けたり、失敗したり、挫折すると、それに耐えられない人が出てくることになる。

「挫折を味わっても絶対にめげない人」

どんな状況にあっても、それを笑顔で淡々と受け入れられる人でありたい。



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