2013.11.7 |
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原則に忠実であれ
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野口吉昭氏の心に響く言葉より…
ホンダには、仕事に取り組むときに「A00(エーゼロゼロ)は何ですか」と質問する習慣があります。
「A00」とは「基本要件」を示す言葉で、もとは米陸軍の任務指令書から転用されたもの。
ホンダでは、仕事をする際に、
「この仕事の狙いは、ひと言でいうと何か?」
と、仕事の目的や、なぜそれをすべきかについて、何度も確認しながら進めていくのです。
最初はきっちりと目的を持っていても、一生懸命になるうちにどうしても人は方法論や手段に走ってしまい、自分が何をやっているのかわからなくなってしまいます。
だから、目的と手段をはき違えてはいけません。
その良いお手本を見せてくれたのが、世界規模で展開しているコーヒーのチェーン店「スターバックス」の創業者ハワード・シュルツです。
スターバックスは全世界で着々と店舗数を広げていき、2000年、シュルツはCEOの座をジム・ドナルドに譲りました。
ところが、ドナルドは売上目標に固執し、徹底的な売上至上主義に走ってしまいます。
例えば、温かいサンドイッチの販売を始めたのです。
そのため、スタバらしさの象徴である「店内に一歩足を踏み入れた際の店員さんの笑顔とふんわりと漂ってくるコーヒーのいい香り」が、スターバックスから消えてしまいました。
店員さんは、サンドイッチ作りで忙しくなり、コーヒーの香りもサンドイッチの匂いに消されてしまったのです。
ただ儲けるためだけに、コーヒーとは無関係の“ぬいぐるみ”が店頭に並べられたりもしました。
売上にこだわった結果、スターバックスがそれまでに作り上げてきた、コーヒーを第一とする「場」の空気が、壊されてしまったのです。
業績も悪化の一途をたどりました。
一時は、株価が8ドルまで下落し、どん底の状況に陥ってしまいます。
スターバックスがにっちもさっちもいかなくなった2008年、会長職に退いてたシュルツは、CEOとしてもう1度表舞台へと戻ってきました。
そして、復帰した彼が真っ先にやったことは、アメリカ国内にあるスターバックス7100店舗すべてを一時的に閉鎖することでした。
そして、店員に対してエスプレッソを淹(い)れるトレーニングを徹底的に行なったのです。
要するに、スターバックスがやりたいことは何か、スターバックスで働く人たちがやるべきことは何なのか、何がスターバックスの場の空気を作り上げていたのか、つまりスターバックスの「A00」を、もう一度考え直す時間を作ったのです。
2010年、スターバックスの収益は過去最高の107億ドルを記録しました。
営業利益も右肩上がりで、シュルツの手腕が改めて認められる結果となったのです。
シュルツはこう語っています。
「どんな企業でも逆境にあれば、すぐに痛みを解消してくれるアイデアに飛びつきたくなるものだ。
しかし、会社を人生として考えてみると、従うべき指針や核となるものには忠実でなければならない」
『「ありがとう」が人と会社を幸せにする』マガジンハウス
戦後、アメリカの占領軍に、「従順ならざる唯一の日本人」と言われたのが、白洲次郎。
白洲次郎が常に口にしていた言葉が「プリンシプル」。
つまり、原則に忠実であれ、ということ。
思いもかけない事態に陥ったときほど、原則に忠実でなければ、現場はますます混乱する。
「何のため」、「それは何のため」と、「何のため」をくり返すと、原則や目的が浮かび上がる。
「困ったときほど、すぐに痛みを解消してくれるアイデアに飛びつきたくなるもの」
分からなくなったら、もう一度原則に立ち戻り、やるべきことを忠実にやる必要がある。 |
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