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2013.10.31

成功者は端っこにいる

際コーポレーション会長、中島武氏の心に響く言葉より…

たくましく生きよう、強く生きよう、という姿勢は、それ自体が人間の美学である。

時代を超えるDNAのようなものである。

この姿勢がなければ、人間という種は、どこかで途絶えていたと言ってもウソにはならないだろう。

「強く生きる」とは、どういうことなのか。

「勝とう、勝とう」と人を押しのけて、遮二無二前に出ていくことなのかどうか。

それを強いと思い込んでいる人間が多いのは事実である。

拓大応援団にもいたし、社勤めのときにもいた。

別にめずらしくもなんともない。

どこにもそういうたぐいはいるだろう。

私はその道は苦手、である。

むき出しの腕を誇って振り回しているようで、どうにも恥ずかしい。

センスがないな、と思う。

むろん私とて、自己顕示欲も自我意識もだれにも負けないほど強いし、自己顕示欲、自我意識がないと存在感のある人間にはなれない。

それは確かだが、その出し方、表し方を、もう少しどうにかならないか、と思うのだ。

拓大応援団ですさまじい先輩たちにもまれるなかで、私は私なりの生き方を学んで身につけたように思う。

簡単に言えば、「勝ちたい」と目を血走らせた男が人を押しのけようとしたとき、ふっと体をかわしてゆずる生き方である。

彼は私がゆずったおかげで前に出られるだろう。

だが、それで彼が勝ったわけではない。

私が負けたわけでもない。

ほんとうに勝負が決着するのは、もう少し先だとわかっていれば、このときに先をゆずるくらい、なんでもない。

より実戦的に言えば、成功したければ端っこに座りなさい、ということだ。

この「成功」は惹句(じゃっく・人の心をひきつける短い文句)である。

私自身成功しているとは夢にも思っていないから、「人生を楽しみたければ」とでも読み解いたほうがいい。

人生を楽しみたければ、中央の席は座りたい人にゆずって、端っこに座っていなさい。

今は、端っこで微笑んでいなさい、と。

人生を楽しむ度量、器量を持てば、血眼(ちまなこ)で「勝つ」ことはない。

それよりもあえて「勝たない」と引いて構えて、次の一手を考えたほうがいい。

楽しむためには、面(つら)の皮を厚くして生きて、左の耳に入ったお説教をすぐさま右の耳から放り出したほうがいいときもあるし、思いどおりにいかなかったら、イソップ童話のように、手の届かないところに実っているブドウを「あんな酸っぱいブドウ、食べてやるもんか」と立ち去るキツネになったほうがいいこともある。

いずれにしても決して正面から逆らわない。

あらゆる知恵を駆使して、ゆずって、引いて、ときには屁理屈で多少の口答えはして、決定的に負ける状態は避けて、最後の最後に勝機を見つけて勝つ。

それが中島流の「勝たない発想で勝つ」ロジックである。

そういうロジックを、私は自分の人生のなかでたくさん経験してきた。

そのロジックを使いまわして、身長165センチながら、猛者(もさ)ぞろいの拓大応援団で団長も務めた。

『成功者は端っこにいる』講談社+α新書


泳げない人は、浮こう浮こうとしてもがくので、どんどん沈んでしまう。

反対に、「いっそのこと、沈んでやれ」と、沈もうとすると、逆に浮くという。

体の力が抜けるからだ。

自分に変に自信のある人は、自信のある得意技で負けることがある。

そこに慢心や、おごり、思い上がりがあるからだ。

ガチガチに力(りき)めば力むほど、体も心も固くなる。

自信などなく、自分の弱みを知っている人は、むやみには戦わず、引いたり、よけたり、逃げたりする。

始終目立たぬ端っこに座っていようとも、長い人生、いつか光ることもある。

先頭切って、遮二無二走るだけが人生ではない。

「成功者は端っこにいる」

力を抜いて、たくましく生きてみたい。



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