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2013.10.5

自分の頭で考える

前刀禎明氏の心に響く言葉より…

当時の高名な経営者から直接話を聞くセミナーが開かれたときのこと。

温泉旅館を借りての合宿形式で費用もかなり高額。

しかし、京セラの稲盛さんは、講師のなかに、本田技研工業を創業された本田宗一郎さんの名前を見つけ、とにかく本田さんの顔を見たい、声を聞きたいと思って参加したそうです。

参加者が待ちわびるなか、本田さんは、油染みのついた作業着姿のままで姿を現わし、開口一番、こう一喝しました。

「みなさんは、いったいここへ何しにきたのか。

経営の勉強をする暇があるなら、さっさと会社へ帰って仕事に励みなさい。

飲み食いしながら経営が学べるわけがない。

それが証拠に、私は誰からも経営について教わっていない。

こんな高い参加費を払ってくるバカがどこにいる」

高いお金を払って、汗もかかずに経営が学べるのか。

経営者として本当に学ぶべきなのは現場での試行錯誤であり、お客さんからではないのか。

経営のやり方に正解はない、それぞれ自分のやり方があるだけじゃないか。

本田さんは、畳の上で水泳の練習をすることのバカらしさを教えていたのです。

また、ある学生が、「最近、自分の思考能力が落ちているのではないか」と考えました。

原因を探るうち、学校や日常生活で疑問に感じたことや忘れてしまったこと、ちょっと考えたり本を見ればわかるようなことでも、何も考えずにスマホやパソコンで調べている自分に気づいたというのです。

「?」と思った瞬間の次の行動は「考える」ではなく、スマホやパソコンのキーを押すことだったのです。

彼はそれを生活習慣だと考え、直すには生活を変えるしかないと「ネット断食」、つまり、インターネットにつながらない生活を一ヶ月だけ試してみた。

すると、考える力が戻ってきたらしいのです。

疑問を持ったときに、一度も考えようとせず、すぐに検索に走る傾向は、社会全体に共通して言えるようです。

思考のプロセスはどこにいってしまったのでしょうか。

インターネットが今ほど普及する少し前までは、わからないことがあったら「自分で調べる」時代でした。

人に話を聞いたり、本屋や図書館へ行って情報を探してやっと入手できたとしても、古かったり、不確かな情報も多く混じっていたりしました。

どれが正しい答えなのか、別の視点からの情報はないのか、自分で考え、判断しながら正解に近づいていったのです。

『人を感動させる仕事』大和書房


経営の勉強会や講演会が悪いわけではないし、インターネットで検索することが悪いわけでもない。

ただ、大事なことは、自分の頭で何も考えようとせずに、効率よく回答を得ようとする姿勢が問題なだけだ。

手っ取り早く最短の時間で成功を目指す人の多くは、成功事例をマネすることであり、今繁盛している店や、商品をマネすること。

個々の会社や個人の成り立ちが違うのに、ただ結果だけをマネしても、当初はうまくいったとしても、長くは続かない。

会社でも個人でも、自らの経歴や特徴をつなぎ合わせて、他とは違う独創性を追及しない限りこの時代を生き残れない。

それらの経歴が、今の仕事と違ければ違うほど、それらがつながったときに、突拍子もなくユニークになる可能性は高い。

無難な組み合わせや、人マネからは無難なアイデアしか出てこない。

今こそ、とらわれることなく、自分の頭で考えることが重要だ。



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