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2013.10.2

人生のサービス

萩本欽一氏の心に響く言葉より…

この前テレビを見ていたら、仕事が終わるシーンで「あ〜、やっと終わった」っていう台詞(せりふ)が出てきました。

この言葉、けっこう日常で使うよね。

世の中の人はだいたいみんな、自分のやることを時間で区切って、一つずつ片づけていきますね。

でも、そこには運がない。

運っていうのはね、「終わった」と思った瞬間の、ちょっとうしろにあるんです。

野球の練習でいえば、6時になって「あ〜、終わった」と言ってると、ごく普通の選手ができあがっちゃう。

6時になって「今日の練習は終了!」って言われたあと、「えっ、もうちょっと続けたいな」って思う気持ちが大事なの。

「あと10分、バット振ってから帰ろう」と思って一人で練習していると、それが運につながります。

あまり楽しめないことでも、もしそれが自分の仕事だったら、終わるのを少しだけ延ばしたほうがいいですよ。

決められた時間だけじゃなく、そのあとも働いていると、それを見ていた人が運をくれます。

僕が高校時代の夏休みに洋食屋さんでアルバイトをしていたときも、終わったあとに、

「厨房の中をもうちょっときれいにしてから帰ろうかな」

「汚れているお鍋があったから、今日はあれを磨いていこうかな」

と思ったことで運が向いてきた感じがします。

その後、洋食屋さんを経営していたご夫婦が、僕だけ夏休みが終わったあともアルバイトさせてくれました。

自分で目標を決めて、人よりほんの少しでも余計に仕事をやっているうち、どんどん仕事が楽しくなってきたのもうれしかったな。

浅草の劇場で修行をしていた時代も、先輩たちのお茶を入れたり、化粧を落とすガーゼを自主的に洗っていました。

そのとき、ふと思ったの。

このガーゼを洗うんだったら、襦袢(じゅばん)も一緒に洗っておこうかなって。

与えられた仕事以外に「これもしておこうかな」「あれもできるかな」と思ってやってみることって大事だと思う。

言ってみれば、人生のサービスだよ。

会社から給料をもらうばかりじゃなく、感謝の気持をこめてちょっぴりサービスしちゃう。

周りの人だって、必ず見てますよ。

浅草時代も、「お、坊主、洗っといてくれたのか」って、日頃怖い先輩が優しい口調で言ってくれましたしね。

今の世の中、人間関係がどことなくギクシャクしがちでしょ。

これも僕は「サービスが足りなくなったから」だと思ってます。

『負けるが勝ち、勝ち、勝ち!』廣済堂新書


いかにも、「自分は一生懸命やってますよ」、とこれみよがしにやるサービスはかえって逆効果だ。

人の心をうつサービスは、利他の心でする無私のサービス。

損得にたけ、計算ずくで生きている人に、それはできない。

「其の知に及ぶべきも 其の愚に及ぶべからず」(論語)

利口な人間になることはできるが、なかなか馬鹿にはなれない、ということ。

損得で動く小利口な人間には運はめぐってこない。

自分の利を後にし、人の喜びを先にする人は、現代社会ではまるで愚のように見られる。

それが、「人生のサービス」。

感謝の気持で人生のサービスをする人には、やがて運がやってくる。



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