2013.8.26 |
|
かっこいい人には理由(わけ)がある
|
|
クリエイティブ・ディレクター、箭内道彦氏の心に響く言葉より…
矢沢永吉さんのプロモーションビデオやCDジャケットの制作もやらせてもらっています。
矢沢さんは、とにかくすごい人です。
僕が初めてプロモーションビデオの企画を矢沢さんに持っていったときのことです。
僕の説明をじっと聞いてから、「箭内(やない)さんすみません。この企画、矢沢まったく理解できません」と言うんですね。
そうすると僕は普段の癖で、すぐ相手の言うことに従いますから(笑)、「しまった、作りなおしてきます」と言いそうになる。
でもそこで矢沢さんは、「これ、理解できないから矢沢にやらせてください」と言うんです。
矢沢さんは「わかることはやりたくないんだ」と言うんですね。
それってすごいなと思うと同時に、まったくわからないことを矢沢さんにやってもらうわけですから、「つまり僕が全部責任をとって良いものにしないといけない」ということなんです。
「絶対に矢沢さんがかっこ良く見えるように、オレが死んでもがんばらねば」と思いました。
矢沢さんは、初対面の僕の名前を、自分を矢沢と呼ぶのと同じくらいの数、呼ぶんですね。
「矢沢はこう思うんです。どう思いますか箭内さん」って。
あの矢沢永吉が僕の名前を、ちゃんと目を見て1分間に2〜3回くらいのペースで呼び続けるんです。
もうそのうちに「この人のためならタダでもいいから働いてあげたい」と思ってしまうんです。
さらに矢沢さんは打ち合わせのあとで、「箭内さん、矢沢の船に乗ってくださいますか」って言うんです。
「そんなこと言われたらちょっと断れないですよね…」って言ったら、「うれしいな。箭内さんが乗ってくれるなら、ボイラー室で汗かきます」と返してくるんです。
こういう一つひとつの言葉が矢沢さんの味方やファンを増やしていくんだなと思いましたね。
そのときの打ち合わせでは、1時間のうち58分は矢沢さんが話していました。
途中で矢沢さんもそのことに気づいて「箭内さんすいません。今、矢沢だけがしべっちゃってます」と言うんですね。
でも、「箭内さん。ただ、今日はそうさせてください」って言うんです。
「今、多分箭内さんの頭の中にいろいろなアイデアが浮かんでいるはずです。でも、今はそれを言わなくていいです」と。
「家に帰ってそれをメモして、次に会うときに矢沢のところに持ってきてください。それを矢沢は見ないでオッケーします」
…この矢沢さんの言葉に僕はしびれました。
とにかく矢沢さんの人との向き合い方はかっこいいと思いました。
『考える力をつくるノート』講談社
人を本気にさせる人がいる。
もちろん、怒らせて本気にさせるのではなく、やる気を起こさせる人、という意味だ。
本気にさせる人は、本気で生きている人。
「世の中は本気になった人から成功していく」とは、西田文郎氏の言葉。
本気になるには、誰かを本気で幸せにしたいと思うこと。
かっこいい人には理由(わけ)がある。 |
|
|