2013.7.29 |
|
自分の世界を持っている人
|
|
川北義則氏の心に響く言葉より…
「人間の衰退の徴候は、魅力の有無である」
こういっているのは、日本ではおなじみの経営学者ピーター・ドラッカーである。
芸能人で「カッコいいな」「面白いな」と人気者だった人間が、急に輝きをなくすことがある。
「いつもと違う。どうしたのだろう?」
そういう人間は、燃え尽きてしまったのである。
お笑い芸人を見ていると、それがよくわかる。
一発芸でのし上がった人間は、すぐに頂点に達し、あっという間に魅力を失って消えていく。
芸の幅が狭いからだ。
ドラッカーは「二つ以上の世界を生きよ」とすすめている。
どういうことか。
たとえば、仕事大好きのサラリーマンがいる。
仕事をやっていれば、あとは何もいらない。
とにかく、いまの仕事が楽しいのだ。
そういう人であっても、まったく異質な世界、そこへ行けば仕事と同じくらい充実した時間を過ごせるもう一つの世界を持つべきだというのである。
別の世界を持っている人は、それが含み資産になって、魅力度が簡単にあせない。
輝きを短期間で失わないですむ。
仕事で初対面の出会いをして、別れ際に何となく、「もうちょっと話していたいな」と思わせる人物がいる。
どんな人間か。
経験から言えば、仕事以外に「別の世界」を持っている人に多い。
マクドナルドの原田泳幸社長は、学生時代からジャズドラムを叩くという別の世界を持っている。
仕事とプライベートをきっちり分けて、両方楽しんでいる。
ドラムは年1、2回ライブコンサートを開くほどだから半端ではない取り組み方である。
よく「本当にやりたいことは別にある」「暇になったら、ぜひやりたい」という人がいるが、意味のないセリフだ。
本当にやりたいのなら、すぐにでもできるはず。
これらのセリフは、いまの仕事に全力投球していないことの言い訳でしかない。
仕事に邁進し、スランプにもならず、つねに魅力的な自分であるためには、最低でも二つの世界を持つことだ。
『「人間的魅力」のつくり方』三笠書房
「壺中有天(こちゅうてんあり)」という言葉があるが、これは安岡正篤氏が紹介した中国の後漢書の中の物語。
【壺中有天】
役所に勤めている、費長房(ひちょうぼう)は役所の2階から何気なく通りを眺(なが)めていた。
通りには、壺を売っている店があった。
やがて、店じまいの時間となると、売り手の老人が周りを見回し、誰も人がいないのを見計らって、店先に置いてある大きな壺の中に入っていったまましばらく出てこなかった。
不思議に思った費長房は、次の日その店に行き、老人を問い詰めた。
老人は、「見られてしまったか、仕方が無い、ついて来なさい」と言い、壺の中に誘った。
壺の中に入ってみると…
そこは意外や意外、花が咲き、鳥が鳴き、真っ青な天空が広がる別世界だった。
壷(つぼ)の中に、広大無辺の世界がある。
世間の物差しでは計ることのできない、自分だけの独自の世界がある、ということ。
仕事以外に、自分の世界を持っている人は、心豊かでいられる。
追いつめられたり、切羽詰っても、なんとか切り抜けられる心の余裕を持てる。
仕事も全力投球でありながら、「壺中有天」を持つ人でありたい。 |
|
|