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2013.7.8

命の炎を燃やす

冒険家、三浦雄一郎氏の心に響く言葉より…

あれは76歳の時ですが、スキーのジャンプに失敗して左の大腿骨付根がポックリ折れた上、右の骨盤も数か所砕けている。

歩けるようになれば大成功だと。

2か月半入院して、最初の1週間は咳をするだけでも大腿骨と骨盤に激痛が走り、はりを刺しても30分ほどじっとしていなければ痛みが取れない。

寝返りすら打てず、完全介護の状態でした。

ただ、4、5日してから考えたんです。

山の頂上付近で、雪上にテントを張って寝ている。

お互い明日の命も分からないと。

それに比べたら、この完全介護の病院生活は天国のようなものじゃないかと嬉しくなりましてね(笑)。

もし何かあってもナースコールを押せばすぐ飛んできてくれる、おまけにベッドの上で読みたい本を読め、手は無事だから鉄アレイだって持てるじゃないかと。

また、そういう心の持ち方が回復を早めるんでしょうね。

自分一人でどうしようかと、心配ばかりしていても仕方ないですから。

実際に70代で大腿骨を折れば、10人中3人は寝たきりになり、治ってもたいてい後遺症があるといいます。

ところが僕の場合、主治医の先生が首を傾けてるんですよ。

76歳なのに、外れた骨と骨が高校生並の早さでくっつこうとしていると(笑)。

もう一つは人間の思いといいますかね、これが治ればエベレストに登れるんだと自分自身を鼓舞していったわけです。

というのも、101歳まで現役スキーヤーを貫いた父親の敬三は、90歳から97歳までの間に3回骨折をしているんですよ。

普通は90を越えてスキーで骨折したら、もうやめたとなりますよね。

でも、本人はこれが治ればスキーができる、またモンブランで滑れるというその一心で治した。

それも1回だけならまだしも、3回もね。

100近くになって骨折してもまたできるんだと。

人間は、そういう人を知ることが大きいと思います。

年を取ると家族が皆「そんなの無理だ」「もう年だからよしなさい」と止めに掛かる。

これをネガティブサポートと言うそうですね。

ヒマラヤでアラブの放送局が取材に来たんですが、いまや多くの国が高齢化社会になっていて、お年寄りに元気がない、病気をするなど越えなければいけない人類共通の課題がある。

しかし80歳でもこんなことができると証明されたと。

しかもそれは決して超人が成し遂げたわけじゃない。

ケガをした、病気をした、手術をした、しかも50代の後半、メタボになって500メートルの小さな山も登れないほどの体力に落ち込んだ。

不摂生が続き、高齢者にありがちな状態に陥っていたわけですが、そんな人間がこうして復活できたということ。

そこに意味があったと思うんですよ。

しかし80歳でもこんなことができると証明されたと。

人生の師というのは至る所にいると思うのですが、僕にとっても最大の師はやはり父親の敬三ですね。

父はサインを求められると好んで「探求一筋」と記していました。

「諦める」という言葉を知らず、100歳を越えて入院した時も、痛いという言葉を一切吐かず、周囲の人に心からありがたいと感謝の気持を口にしていたんです。

そしていつも僕に「あんた、70?若いねぇ」と(笑)。

自分でいくら年を取ったと思っていても、そんな父の言葉や生きざまに触れると、いつでもそこからスタートできるように思います。

自分で夢をつくり、その夢を実現したい、目標を達成したいという思いを持つことが、人生を楽しくし、その寿を保たせる秘訣ではないでしょうか。

そうやってこれからも命の炎を燃やし、自分の人生を生き尽くしたいですね。

《果てなき限界への挑戦》対談・三浦雄一郎&大竹美喜

『月刊致知 2013年8月号』致知出版社


三浦雄一郎氏は、70歳でエベレスト登頂、続いて75歳で2度目の登頂に成功した。

そして今年5月、史上最高齢となる80歳にして、3度目のエベレスト登頂を果たした。

いくつになっても夢をあきらめずに追い続ける人は魅力的だ。

ミュージカル「ラ・マンチャの男」の主題歌、『見果てぬ夢』を思い出す。

それは、「To dream the impossible dream」の言葉から始まる。


見果てぬ夢を見続けて


かなわぬ敵と戦い続け


耐えがたき悲しみに耐え抜き

勇者すら行かぬところへ向かう



これが私の冒険の旅

その星を追いかける

どんなに望みがかなわぬものでも

どんなに遠くにあるとしても




作者のセルバンテスは、こう語る。

「富を失うものは、多くを失う。

友人を失う者は、さらに多くを失う。

しかし、勇気を失う者は、全てを失う」

いくつになっても、命の炎を燃やし、勇気を失わない人でありたい。



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