2013.5.23 |
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欠点は個性
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元NHK美粧師、岡野宏氏の心に響く言葉より…
「おれのこのさー、下がった目はどうにかならないすかぁ」
中村雅俊さんが部屋に入ってきた。
ジャージ姿で入ってきた雅俊さんは、顔に似合わず低音のかっこいい声をしている。
「どれどれ」
私は鏡ごしに雅俊さんの顔を見た。
なかなかいい顔をしている。
確かに下がっているが人懐っこく愛嬌があっていい目だった。
もし中村雅俊さんの目が二枚目風の凛々しい目だったら彼はここまで人気が出なかっただろう。
私は雅俊さんに話しかけた。
「雅俊さんの周りには人が集まってきますよね。初対面の人でも雅俊さんには親しそうに話しかけてるでしょ」
「そうだね」
「それって、垂れ目のせいですよ。温かそうで、優しそうな顔に見えますからね。」
「そうなの?」
「雅俊さんが役者としてここまでこれたのは、その目のおかげかもわかりませんよ」
顔の中で人と大きく違う部分を欠点と感じる人は多い。
私に言わせれば人より大きいとか小さいとか、上がりすぎ下がりすぎは欠点ではなく個性である。
人と違えば違うほどその人の「売り」になる大切な場所だ。
渥美清さんも若いときは、あの額の大きなホクロを取ろうか取るまいか悩んでいた。
今となってはあのホクロは渥美さんの宝である。
ある女優が「きっとあなたホクロを取ったらもっときれいよね」と言われ続けていた。
その女優は悩んだ末ホクロを取ったのだが、その途端仕事が減ってしまった。
逆に吉永小百合さんが「夢千代日記」に出演されていたときは、ファンデーションを塗った後にわざとホクロをつけていた。
ホクロやアザやソバカスというのは意外と良いアクセントになるのだ。
山野美容芸術短大副学長で化粧品化学を担当されている内堀毅教授に面白い話を教えていただいた。
「香水は臭い香りを一滴混ぜると、他の香りを引き立てて素晴らしく良い香りができるんです。良い香りばかりを集めてもいい香りはできないんですよ」
人の魅力も同じだ。
すべて完璧な人よりも、どこか人と違い、外れているものがある方が全体の魅力は増して見える。
欠点と思い込んで変えてしまうのはもったいない。
自分を助けてくれているものは、実は欠点と思っている部分なのかもしれない。
欠点を隠す前に、その良さを探ってみてはいかがだろうか。
『一流の顔』幻冬舎
岡野氏は、1940年、東京生まれ。
TV白黒時代よりNHKのアート美粧部に在籍し、歴代総理から馬の顔まで約10万人のメークを行なってきた。
アンパンマンの作者、やなせたかしさんはこう語る
「人間は欠点のない人を好きになりませんよ。」
弱い所があるから強い部分が引き立つし、短所や欠点があるから長所やいいところも生きてくる。
無表情で無感動の感情を決して表さない人より、悲しいときや、面白いとき、嬉しいときに、大いに泣き、笑い、楽しむという、喜怒哀楽の激しい人の方が数万倍魅力的だ。
「欠点は個性」
もう一度自分の欠点を見直し、そこに感謝する必要があるかもしれない。 |
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