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2013.5.21

人間動員力

城野宏氏の心に響く言葉より…

近頃日本では、さかんに「実力主義」の主張がなされているようです。

「実力主義」というなら、学歴があったり、資格試験にパスしていたり、年功序列で古参であったとしても、「実力」があれば出世させて一向に差し支えがないということになる。

ところが、ジャーナリズムに現れる「実力主義」は、殆どが、学歴、資格試験、年功等のあるものは出世させてはいけない、それのないものを出世させろという主張だという印象をもたせてしまう。

学歴、キャリア、年功等をもっているものはみんな「実力」がないのだとうことにされてしまう。

実力のないものを抜擢するのだということを方針にしている会社、官庁、学校など一つも存在しないといってよかろう。

年功だけで実力は一切考慮しないという方針をとっているところは殆ど存在しないのだから、日本社会は「年功序列か、実力主義か」といった問題提起はなんの役にもたたないのである。

実際を外れた言葉の遊戯にすぎない。

問題は、実力、実力といっているが、何が実力の標準とされているかという点にある。

少し極端な言い方をすれば、実力主義を主張する当人は「実力」があるけれど自分が自分を評価している実力相当には他人が評価してくれず、自分が希望するような出世がさせてもらえないことへの不平を「年功序列を排し、実力主義を」といった錦の御旗に置きかえて表現しているものが多いようだ。

具体的には、自分の優点だけ挙げて欠点には目をつぶり、他人、特に上の地位についた者の欠点を取り出して優点は伏せるといった手法が多いようだ。

この際の「実力」とは、つまり主張者当人の「優点」ということにしかならぬ。

日本リクルートセンターの調査によると、一般企業で「高く買っている能力」は「社交性、協調性」であり、「低い評価」は「専門性、基礎学力、一般能力」だそうである。

企業、特に大企業で買われているのは、親切で、よく人の面倒を見、人を育て、他の企業や機関とよく協力強調のできる人物である。

人間動員の実力といってもよかろう。

大企業のヘッドになっている人は、大体においてこういう人物である。

この「実力」をもたぬ人物は、どんなに頭が切れる、知識が豊富、やり手といった評価があっても、大組織の長にはなれない。

日本という組織性社会では、専門知識を振り回したり、個人の能力をいくら売り込んでも、その人だけでうまくやりとげられるという仕事はないのである。

また、世界一に教育の普及した日本社会では、何等かの知識を振り回すだけでは、他人を動員し組織的活動をうまく完遂することはできない。

欧米的実力主義の社会では、部下を育てて力をつけてやれば自分が追い出されることになるから、自己の職業のノウハウは秘密にして他人に伝えず、それを自分だけがもっているということを売りものにする。

日本では、そのノウハウをできるだけ部下に伝え、すべての人が活用できるようにしてやり、その綜合活動力で成果をあげるようにもっていく。

だから部下育成能力がなければ、日本では立派な仕事をすることができないし、「実力ある」指揮官とは認められない。

『日本的常識の診断学』日新報道


組織の大小に関わらず、「人間動員力」はリーダーにとっても最も必要とされる資質だ。

リーダーは人を動かすことによってしか、目的を完遂することができない。

人数が多ければ多いほど、自分一人が頑張ってもたかがしれているからだ。

D・カーネギーは、「人を動かす秘訣は、この世に、ただ一つしかない。すなわち、みずから動きたくなる気持を起こさせること…これが秘訣だ」と言っている。

「ロバを水辺まで連れていくことはできるが、ロバに水を飲ませることはできない」ということわざのごとく。

のどが渇いていなければ、無理矢理水を飲ませることはできない。

人をやる気にさせるリーダーは多くの人を動かせる。



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