2013.3.27 |
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アヒルを白鳥に
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バルバラ・リッチ氏の心に響く言葉より…
サッカー選手への注目度は非常に高く、ほんの小さなことすら取材の対象になります。
少し前のこと、イタリア屈指の、また国際的にも非常に有名なチームに所属する、ある若いサッカー選手のお手伝いをしたことがあります。
この若い選手は当時、リザーブという立場でした。
彼の前にそびえるのは、ワールドカップに何度も出場した、ファンの信望も厚い、20年近くも同じチームでプレーし続ける偉大な選手です。
この若者は、当然控えという役割を熱望していたわけではありません。
記者の前でも、隠すことなく不満を表し、
「ぼくはあの人と同じくらいやれる。でもベンチにいなければいけない」
「ぼくはいい選手だ。でも、ある人たちが引退しない限りプレーできない」
「控えにされるなんて不当だ」
などと言っていました。
取材の答えは、いつもネガティブな調子でした。
その結果は、毎回毎回、彼が文句を言っていると伝える記事です。
クラブの幹部は、何度も彼を呼び出して、監督の方針と決定に沿った行動をするように申し入れました。
一方で監督はますます腹を立てて、彼をベンチにとどめておきました。
彼は落ち込むばかりです。
この時私が使った作戦は、この経験を「前向き」に転換させるアドバイスでした。
「あのような偉大な選手の控えでいられるなんて、幸せなことです」と言うようにすること。
「たくさんのことが学べる、偉大な選手が目の前にいるのは、光栄なことだ」と思うこと。
「たとえベンチから出してもらえないのは不当だと思っても、それを他の人に言うのは間違いだ」と考えること。
本当なら、黙って自分の番を待ち、いざ呼ばれた時に最高のプレーを見せるべきでした。
無意味にしゃべるよりは、自分の才能で証明したほうがいいのです。
この作戦を実行に移すチャンスは、すぐにやってきました。
イタリア国営テレビの取材が入りました。
選手は私と一緒に準備し、何か聞かれた時は、私のアドバイスの方針に従って答えることに決めて、いざインタビューへ。
この時、彼とメディア、彼とファンの関係に、大きな変化が生まれたのです!
記者は、彼のポジティブな発言に驚いていましたが、すぐに、もっと前向きで明るい質問へと移りました。
質問はいつもの「いつもそんなに怒っているのはどうしてですか?」ではなく、
「調子がよさそうですね。どうしてですか?」
「もっと学びたい点というと、どういう点ですか?」
などの前向きなものでした。
取材の雰囲気はおだやかで、彼はいつもよりリラックスして、笑顔で答えていました。
翌日、クラブの幹部も変わりました。
このような明るい発言を聞いて、初めて、彼の問題への理解を示したのです。
これは、ちょっとしたことに注意し、問題点を直したことで、人との関係をよくすることができた例です。
『アヒルを白鳥に カエルを王子様に変える本』祥伝社
バルバラ・リッチさんは、イタリア・セリエAでマーケティング・コミュニケーションのスペシャリストとして、サッカー選手たちをセンスよく、知的で、華麗に磨き上げてきた女性だ。
バルバラ・リッチさんはこう語る。
「例えば、何だか感じの悪い選手。
実は、シャイなだけなのです。
やけに無愛想(ぶあいそう)で、失礼な感じのする選手。
本当は、取材への対応方法がよく分からず不安なだけなのです」
これは、サッカーだけでなく、一般の会社や社会でも同じことが言える。
自分の発言がまわりの人にどんなふうに聞こえているか、その発言でどんなイメージを持たれるか、等々を考えないで発言している人は多い。
「アヒルを白鳥に カエルを王子様に」
ネットの発言も含めて、自らの発信する言葉や態度をもっと磨きたい。 |
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