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2013.1.1

常若(とこわか)

元日によせて…

何年か前、伊勢神宮に参拝させていただいた時のこと。

お伊勢さまにお神楽(かぐら)を奉納すると、神楽殿で、専属の楽師による雅楽(ががく)と、舞女(まいひめ)の倭舞(やまとまい)、男の舞人による剣を身にまとっての人長舞(にんじょうまい)を見ることができる。

営々と続く日本の伝統美がそこにはある。

神宮でのお祭りは年間で実に1500回以上に及ぶという。

毎朝、古式にのっとり木の棒をまわして火をおこす。

神様へ食事は日に2回。

このお供(そな)えが営々と1500年続いている。

神宮に携わる神職は200人をこえ、関係者を入れれば500人以上になる。

その一人一人がエキスパートだ。

それは、神様にお供えする、お供物や祭器をすべて自前で作るからだ。

お塩

お米

お酒

野菜や果物

素焼きの土器作り…

それらを担当する専門の神官がいる。

もちろん、雅楽も舞いも。

機織(はたおり)も装束(しょうぞく)製作も。

建築も。

現代では、神職以外に、経理、財務、山林管理の職にある人も全ての専門職が祭事には装束を着て参加する。

伊勢神宮には、式年遷宮(しきねんせんぐう)という、20年ごとにお社(やしろ)を建て替える儀式がある。

遷宮ではお社を新しくするのみならず、2000種類近くのご装束や、500点に及ぶ御神宝や神具も古式そのままに、すべて新たに造り替えられる。

その精神を、「常若(とこわか)」という。

時代や精神を継続するには、「常に新たに、日々に新たに」という気持ちが必要だ。

営々とそれが現代まで続いている。

以前、伊勢神宮の神職の方の講演をうかがったことがある。

その中で、海の正倉院といわれる、九州の沖ノ島にある宗像大社(むなかたたいしゃ)の話が感動的だった。

神の島として長い間、一般の立ち入りが禁止されていたため、1954年に初めて祭祀遺跡(さいしいせき)の学術調査が行われたそうだ。

その時に出土したのが、約12万点以上の祭祀遺品。

しかし、その使い方や、名前がわからない。

そこで、伊勢神宮に問い合わせがきた。

その結果、ほとんどの祭祀遺品が判明したそうだ。

1200年前の出土品の使い方や、名前がはっきりと分かるところは、世界中どこを探してもない。

遺物は出土しても、取り扱い説明書などが、一緒に埋まっているはずがないからだ。

しかし、伊勢神宮では、1300年にわたって、20年ごとに神宮で使う全ての祭具や装束や建物を、全て新しく作り、その技術まで伝承している。

つまり、1200年前の、沖の島の出土品が、そっくりそのまま伊勢神宮では、今も使われているということだ。

技術の伝承は、20年が限度といわれる。

例えば、若い人が20歳、その上の親方が40歳、その上の大親方が60歳という年齢構成だと、技術は廃(すた)れずに継承される。

そして、いよいよ本年がその式年遷宮の年。

この第62回(平成25年)のご遷宮にはおよそ550億円のお金がかかるという。

造営に必要な木材は約1万本、萱は1万3000束。

ヒノキは大きなもので長さ10メートルを超える。

国からの補助はない。

しかし、一見無駄のように思える20年ごとのご遷宮が日本人の叡智と、技術の伝承を守ってきた。

日本のルーツでありDNAである伊勢神宮を守っていくことは、歴史や伝統という日本そのものを守ることでもあるのだ。

江戸時代にはおかげ参りといって一生のうち一度はお伊勢さまにと、人口の6分の1の500万人が参詣した。

江戸からだと一日40キロを歩いて約2週間かかる。

つまり、一日に10時間歩かないと達成できない距離だ。

現代人なら恐らくその倍はかかるだろう。

それほどに古くから、大切にされた伊勢神宮。

以前、ある企業から伊勢神宮に神職として出向された方が話してくれた。

「神宮に配属され一番驚いたことは、廊下で出会った偉い神職の方々が、常に一旦立ち止まり、深々と礼をして挨拶してくれたことです」、と。

そこには上下も新参者もない、「真の礼」という凛とした美しい礼儀作法と、相手を敬う心がある。

またその方が、巫女(みこ)さんのことを、「ひめさん達は…」と優しく言っていたのが印象的だった。

何ごとの

おわしますかは

知らねども

かたじけなさに

涙こぼるる

(西行)

連綿と2000年続く伊勢神宮。

常に新しく生まれ変わる、常若(とこわか)の神宮。

そこには、何か目には見えない、厳(おごそ)かで、涙が流れるような深い感動がある。




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