2012.11.28 |
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功を焦(あせ)る
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門昌央氏の心に響く言葉より…
家康がめきめきと売り出していたころのこと。
ある大名の家来が、戦場で首を取ったので、自分の主人をすっとばして、いきなり、家康のところへ見せにきた。
そして得々と、自分の戦いぶりを話した。
家康に認めてもらおうと思ったのだろう。
家康は終始、ニコニコして聞いていたが、その男の話が終わるとこう聞いた。
「おまえが戦っているとき、おまえの主人はどこにいたのだ?」
「知りません」
この男は、自分がしたことの意味がわかっていなかった。
そう思った家康は、「主人にここにくるように言え」と命じた。
男は、勢いづいて走りさった、主人に自分のことをほめてくれるだろうと思ったからだ。
主人がやってきたので、家康はこう言った。
「今、こういう男がきて、これこれの報告を聞いた。しかし、わしは気に入らない。すぐ、あの男をクビにしなさい」
主人はびっくりした。
そして、
「なぜ、あれだけの手柄を立てた男をクビにしなければならないのですか?わたしは、あなたにお願いして、あなたにも認めていただけるなら、出世させようと思っていたのですが」
そう自分の考えを述べたが、家康は首を振った。
「いや、反対だ。あの男はあなたの旗本だった。しかし、自分の持場を離れて、功を焦り、自分の手柄だけを考えて、敵の中に切り込んでいった。あなたが襲われたら、いったいどうするのだ?自分の責務を忘れて、ただ自分だけの功名に走るような部下はわたしは嫌いだ。だからクビにしろというのだ」
『「要領が悪い人」ほど成功する!』成美文庫
功を焦(あせ)って、自分だけよくなろうとしている人間は、まわりが見えていない。
自分の損得だけを考える、自己中心的な人になってしまっている。
「功をあせるな。悲観するな。もっと根を深く張るんだ。根を深く掘れ!」(升田幸三)
自分の損得など考えず、黙々と自分の根を深く掘る人にはいつか光があたる。 |
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