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2012.11.13

「買いたい!」スイッチ


小阪裕司氏の心に響く言葉より…

そもそも人間はどのように価値を認識するのだろうか。

それを考えるいい題材がある。

「エモーション・ド・テロワール」というフランス産ワインがある。

講演会では、客席の方々にこのワインボトルの写真を見ていただき、第一のスライドをお見せする。

そこには商品名と価格(3800円)、フランスワインであること、赤はフルボディであることが示されている。

そして「今このワインが飲みたいという気持がわき上がっている方はどれぐらいいらっしゃいますか」と尋ねる。

会場に5、600人いても、手を挙げるのはたいがい1人か2人だ。

そこが店だとすると、このワインはほとんど売れないことになる。

次に、「このワインはジュヴレ・シャンベルタン、ヴォーヌ・ロマネ、シャンボール・ミュジニ、マルサネという、4種類の葡萄を使用しています」

これで飲みたくなるかというと、やはりならない。

会場の方に再度挙手をお願いすると、多少は増えることもあるが、先ほど1人か2人だったのが7、8人になる程度だ。

このように商品説明を語っても「買いたい!」スイッチは押されない。

次に、あるダイレクトメールのスライドを映す。

「今、フランスのワイン界で、天才と呼ばれているワイン醸造家がいます。

それは『ヴァンサン・ジラルタン』さんです。

有名なワイン評論家ロバート・M・パーカーJr.も『彼のワインを見つけたら走って買いに行け』と言っているほどです。

ところが、そんな彼がフランス政府に逆らって世に送り出したワインがあります。

それが、このワインなのです」

会場のスライドでこの文面をお見せすると、たいがい6割ぐらいの方が挙手をしてくれるようになる。

「買いたい!」スイッチが押されたのだ。

しかし、ここで私は、DMを上手に作ろうと言いたいわけではない。

ここで重要なのは、人はどのようにして価値を認識するかということである。

『価値創造の思考法』東洋経済新報社


小阪裕司氏は、こう語る。

「どうして私が今、あなたから、この商品を買わなきゃいけないの?」

というのが、お客さんからの究極の質問だという。

この質問に答えられなければ、お客さんに買う動機は発生しない。

人は、理由がなければ行動しない生き物であり、行動する理由とはすなわち「動機」のことだ。

スペック(仕様書、性能)という、値段やグラム数、産地などを列挙したところで、お客さんに買う気は起こらない。

買うには、行動を起こさせるような理由が必要だ。

どんなに素晴らしい商品でも、お客さんにその価値が伝わらなかったら、この世にないのと一緒。

人に伝える技術を磨きたい。



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