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2012.11.12

人を呼ぶこと


堺屋太一氏の心に響く言葉より…

世の経済的な営みには、3つの種類がある。

「物を造る」「価値を移す」「人を呼ぶ」だ。

これまでの日本は、ひたすら「物を造る」ことに努めてきた。

そして、1980年代には大成功した。

規格大量生産を整えて「物造り大国」になった。

だが、その頃既に人類の文明は変わりはじめていた。

「物財の豊かなことが人間の幸せだ」と信じる近代工業社会の考え方が崩れ、「満足の大きいことこそ人間の幸せだ」という発想が広まっていた。

このため、欧米の先行地域では「物を造る」営みが衰えた。

それに代わって発展したのが、「価値を移す」営みだ。

物販、運輸、金融、通信などである。

近代経済学では別々に分類されているが、実はこれが古くから「商人の営み」とされた産業である。

しかし、それから四半世紀経った今は、これにも疲れが見える。

物販は伸び悩み、運輸は格安航空券に傾き、金融は破綻が相次いでいる。

発展が続く通信の分野でも、でき事を知らせる活動よりも楽しみを交わす類が広まっている。

世界は「人を呼ぶ」営みへと傾いているのだ。

「人を呼ぶ」営みにも表裏二面がある。

人を楽しませ喜ばせる積極的な方向と、人の苦しみや煩わしさを減らす消極的な方向とだ。

後者の代表例が医療や介護、安全や治安、そして保険と防災。

全社の典型がイベントと観光、非日常的な楽しみと歓びを与える産業である。

日本の今は、人の苦しみと煩わしさを減らす方ばかりが強調されている、何とも暗い世の中である。

人間は、安全なら幸せと思えるほど単純ではない。

人を楽しませる営みは、偶然にできることでも、他の真似で成功するものでもない。

覚悟を定めて取り組み、頭脳を絞って考え、言葉を極めて人を説いてこそ、できるのである。

『人を呼ぶ法則』幻冬舎新書


製造業や物販、流通がダメになる、という話ではない。

これからの全ての産業は、「人を喜ばせる」という視点が元になっていくだろう、ということだ。

それが、企画力であり、プロデュース力。

人を喜ばすことができれば、「人を呼ぶ」ことができる。

魅力のあるところに、人は集まる。



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