2012.10.27 |
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引きずらないこと
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田坂広志氏の心に響く言葉より…
何年か前、人間の「不動心」について、興味深い心理学的実験が行われました。
最近、座禅の修行を始めたばかりの若者と、永年、禅寺での修行を積んだ禅師の二人に、脳波の測定実験を行ったのです。
最初、二人同時に、座禅による瞑想状態に入ってもらい、その脳波をそれぞれに測定したところ、二人の脳波は、いずれも、整然とした「アルファ波」を示しました。
そこで、二人を驚かせるために、突如、大きな音を立てたところ、二人の脳波は、いずれも、大きく乱れた波形を示したのです。
結局、永年厳しい修行を積んだ禅師も、決して「不動心」ではなかったのです。
しかし、実は、その後の二人の脳波が、大きく違いました。
若者の脳波は、音が静まった後も、いつまでも乱れ続けたのですが、禅師の脳波は、すみやかに、もとの「アルファ波」の状態に戻ったのです。
この興味深い実験結果は、「不動心」の本当の意味を、教えてくれます。
「不動心」とは、「決して乱れぬ心」のことではなく、「乱れ続けない心」のことなのです。
『自分であり続けるために』PHP
肚(はら)が座っている、とか、どっしりとしてうろたえない、という「不動心」は、何も驚かない、何も感じないということではない。
人は、感じることや、驚き、を失ったら、機能や効率だけを追求するロボットと同じになってしまう。
喜怒哀楽も同じで、喜怒哀楽の振幅の少ない人の方が、人間ができているように思うが、そうではない。
本当は、喜怒哀楽の幅の大きい人が魅力的なのだ。
うれしいときには大喜びし、義憤を感じたら涙を流して憤慨(ふんがい)し、悲しいときは大泣きし、楽しいときには呵呵(かか)大笑する。
しかし、大事なことは、喜怒哀楽を引きずらないこと。
「今泣いたカラスがもう笑った」という、子どものような柔軟な感性が必要なのだ。
色々な感情を、「引きずらないこと」、「とどめないこと」は、とても大事だ。 |
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