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2012.9.27

バカ力(ぢから)を発揮するには


筑波大学名誉教授、村上和雄氏の心に響く言葉より…

遺伝子のON・OFF機能をうまく活用するには、それなりの要因が必要です。

たとえば、末期ガンを宣告された人たちがモンブラン登頂に挑戦したところ、免疫力が上昇したという実例があります。

また、若いときに結核にかかり、療養には栄養補給がいちばんと言われて栄養をとることに専念していたのに、効果がいっこうにあらわれない。

そんなときに東洋医学に出会い、断食療法を実践したところ、つまり栄養を断つほうに治療法を変えてみたところ、結核が快方に向ったといいます。

これも断食による適度な飢餓感によって、関連する遺伝子のはたらきがONになったものと思われます。

「火事場のバカ力」という言葉もあるように、人間は極限的な状況に遭遇したときなど、ふだんでは考えられないような能力を発揮することがあります。

これなどは、私たちの内部で眠っていた能力が目覚めた瞬間の非常にわかりやすい例でしょう。

私の弟はアフリカで、エイズで差別を受けている子どもたちのために学校などをつくる仕事をしていますが、そこに、日本で落ちこぼれてしまった子どもを連れていくことがあります。

一人の高校生の例ですが、日本にいるときは、親がいくら学校へ行くように言っても、「勉強にどんな意味があるのか」と言って、まったく行こうとしないで、盛り場などをうろうろしては、同じような連中と群れて、自堕落に生きていきました。

たまに学校に行けば、規則にしたがわないので、先生から「もうくるな」と言われる始末です。

そんな親も手をつけられない、教師にも見放された少年が、アフリカの子どもたちの現実を目のあたりにするわけです。

アフリカでは、子どもが学校に行きたがっても、親はお金がないから行かせてあげられない。

それどころか、子どももわずかなお金のために朝から晩までゴミ捨て場あさりなどをしています。

劣悪な衛生状態、慢性的な栄養失調、日本では考えられない惨状に直面すれば、いやでも自分の身と比べることになります。

自分は親から月謝を出してもらい、小遣いまでもらって、「お願いだから」と頼まれているのに学校へ行こうとしない。

彼にとっては極端な環境変化と言えますが、そこでなにかの遺伝子がONになったのでしょう。

彼は街の市場に行って自分が着ていた洋服を売り、そのお金で教科書を買いこんで、学校に届けることにしたのです。

子どもたちに教科書を配ると、全校あげて大歓迎してくれたといいます。

おそらく、自分のやったことでこんなに感謝されたことは、それまでに一度もなかったにちがいありません。

帰国後、彼はアフリカの学校に教科書を送る手伝いをしながらスワヒリ語を学びはじめ、いくら親が頼んでもやらなかった勉強に、率先して励むようになりました。

『生命(いのち)のバカ力(ぢから)』講談社+α新書


火事場のバカ力が発揮されるのは、極限状態に追い込まれたとき。

多くの日本人は、現代の豊かな生活に慣れきってしまっている。

だから、遺伝子のスイッチをONにするには、その慣れた環境を劇的に変える必要がある。

健康で言うなら、断食なり、絶食という、断つ方法。

普通は、薬やサプリを飲むというような、栄養なり体に良いものを入れることを考えるが、その真逆にあるのが「断」であり、「捨」だ。

それは、自分を驚かせる、ということでもある。

また、生活でいうなら、今の環境をドラマチックにガラッと変えること。

例えば…

「何に重点的に時間を使うのかという時間配分を変える」

「住む場所やよく行く場所を変える」

「付き合う人を変える」

つまり、T・P・Oという「時間」「場所」「場合」を自ら強制的に変えること。

火事場のバカ力を発揮するには…

時に、自分で自分をワザと厳しい環境に追い込むこと。



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