2012.7.25 |
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テイストを磨くこと
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江崎玲於奈氏の心に響く言葉より…
「独創的な研究開発を進めるための鍵は何か」
その大きな鍵の一つが、「テイストを磨くこと」です。
テイストとはこの場合審美眼とか鑑識眼という意味で、本物を見抜く感性のことです。
そしてこれは、人間が個性なり創造性を発揮する上で最も重要な要素になります。
つまり、何が重要なことで、何に着目したらよいかを正しく見極める力、言い替えれば本物(質)は何かを捉える感性がなくては、独創的な仕事は行い得ないからです。
私のような科学者の場合、特に研究テーマの選定の際にテイストの善し悪しが深く関わってきます。
その意味からも他人の真似をするのは趣味が悪い(バッドテイスト)ということになります。
また能力的にはほぼ同じ二人の人間が同じように勉強をして、一人はいい仕事に結び付け、もう一人はいたずらにデータ量が増えるだけ…ということがあります。
こんな時前者を「テイストのいい人」だという言い方をします。
それぞれの分野で、しっかりした鑑識眼を持つ個人・人間を育てる大切さがここにあります。
そうすれば、「独創的な研究開発」は自ずと進んでくるでしょう。
テイストの善し悪しはウイズダムに関わる問題でもあります。
ウイズダムは通常、知恵、英知、見識などと訳されます。
アメリカで困った社会問題が起こったりすると「これを解決するにはソロモンのウイズダムが必要だ」などとよく口にします。
つまりこれは、洞察力、評価力、創造力、想像力の源泉であり、真理や真実、物事の本質を見透かす力とでもいった能力です。
ウイズダムを備えるには、テイストを磨くことが欠かせません。
21世紀を生きる若い世代に、よいテイストを持つ人間になってほしいというのが私の願いです。
『創造力の育て方・鍛え方』講談社
テイストとは、本来の意味は、「味覚」とか「味わう」ということだ。
そこから転じて、「趣味」「風情」「風合(ふうあ)い」などという意味でも使われる。
遺伝子工学の第一人者である、村上和雄先生は、テイストのよい人を次のように言っている。
「テイストのよい人は、失敗してもめげないし、あきらめない。
その失敗の中から何かをつかむ。
そして、常に明るく、前向きである」
職人や芸事の世界でいう、「筋(スジ)がいい人」のことだ。
「上達する見込みがある人」、といった意味。
まだ荒削りだが、何か光るものをもった、「味のある人」、ということでもある。
自分のテイストを磨き、時代の荒波を乗り切りたい。 |
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