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2012.7.18

サッカー界の壮大なマーケティング

八塩圭子氏の心に響く言葉より…

先週イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(マンU)への入団記者会見を行った香川真司選手だが、ドルトムントに支払われる移籍金は約15億円と報じられている。

そして注目すべきは、それとは別に選手の若かりし時代を支えたクラブにも「連帯貢献金」が支払われるという点である。

12歳から15歳までの所属クラブは移籍金の0.25%(1年ごと)、16歳から23歳までの所属クラブは0.5%を移籍先から受け取れる。

香川選手の場合、今回の移籍で合計7500万円がユース時代の所属クラブなどに支払われる計算になる。

このFIFAの制度がサッカー界のすそ野拡大に寄与することこの上ない。

マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリードなどの強豪チームには人材も資金も集まるものだが、それらを独占的に運用するのではなく、その一部をサッカーを支えている幅広い層に分配することを目指している。

この制度により、経済的に裕福でないチームにも資金が行き渡るほか、「よい人材を育てよう」という意識が高まることが大きい。

特に公立高校の教員などがほとんどボランティアに近い形でサッカーチームを運営している日本においては、情熱を注げば「報われる」ことがどんなに心の支えになることか。

これは、FIFAがサッカー界全体を見据えて実行する壮大な「インターナル・マーケティング」だといえる。

インターナル・マーケティングは、企業や組織の内部に対して、働く上での満足を高めるために行うマーケティングで、主にサービス分野で重視されている。

顧客との接点である従業員が待遇ややりがいで満足していないことには、よきサービスが提供できないという理由からである。

衰えることを知らないサッカー人気を見るにつけ、関わる人々の意識の高さがいかに重要なのかを思い知らされる。

“マーケティング 八塩圭子ゼミ”
『日経MJ 2012年7月16日号』


インターナル・マーケティングとは、一般顧客に対するマーケティングではなく、社内で働く人たちへのマーケティングのことだ。

この言葉を広く知らしめたのは、サウスウエスト航空。

サウスウエスト航空の創業者、ハーブ・ケレハーは、「従業員第一主義、顧客第二主義」を唱えている。

従業員を満足させることによってしか、顧客に最高の満足を提供できない、との考え方からだ。

楚の葉公が、政治の要諦を尋ねたとき、孔子はこう答えた。

「近き者悦(よろこ)べば、遠き者来たらん」

近くの人を喜ばせるような政治をすれば、遠くの人たちもその評判を聞いて慕ってやってくる、ということだ。

人の生き方としてもこれは同じこと。

ボランティアも大事だが、助けが必要な身近な近親者を忘れてはいけない、というようなことだ。

身近な家族や社員を幸せにすることが、顧客や近隣の人を幸せにすることにつながる。

近き者を喜ばせることを常に忘れない人でありたい。



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