2012.6.22 |
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オヒョイさん
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医師の鎌田實氏の心に響く言葉より…
藤村俊二さんにお会いした。
ビシッとしたスーツに綿のチーフ、ノーネクタイ。
寸分の隙もないカッコよさ。
77歳。
自分を「ジイさん」だと言う。
「ぼくは若いころから、人と比べると、不幸がはじまると思ってきました。
人よりいい服が着たいとか、うまいものが食べたいとか、いい仕事をしたいと思うこともあるけど、
そんなときはこう考えるんですよ。
誰だって誰かと比べたら足りないし、比べはじめたらきりがない。
でも、自分がこれで十分だと思えば十分じゃないか。
人と比べるより、自分の好きなものや自分らしいものを基点に生きるほうが、ずっと楽しい」
人と比べて無理をせず、あるがままを喜ぶ。
くよくよ悩まず、なるようになると覚悟を決める。
問題を解決しなければと執着せず、「まあ、いいや」と思う。
そんな生き方をしているという。
「オヒョイ」が、藤村さんのニックネーム。
なぜそう呼ばれているのか、理由を聞いた。
「イヤなことから逃げるんです。ヒョイッと」
笑いながら、そう言う。
まるで子供のような、あどけない顔だ。
「たとえば、お酒飲んでいてイヤなヤツが来たら、
そのままヒョイッと他の店に行ってしまったりなんかして(笑)。
うまいんです、逃げちゃうの」
いいな、と思った。
逃げることって、ムダな争いや、してもしかたない抗(あらが)いをしないですむ知恵なんだ。
「がんばらないというのはカッコいいことです。
がんばっている姿を見せるのは、カッコ悪い。
水面をスイスイと泳いでいる水鳥も、水中では一所懸命もがいている。
しかし、私はもがく姿を見たくないし、見せたくないんです」
もちろん、ヒョイッと逃げるのが得意なオヒョイさんだって、いつも逃げているわけじゃない。
早稲田大学文学部演劇科ニ年のとき、
理論や歴史を教えるだけの授業に物足りなさを感じて、大学を中退。
東宝芸能学校でダンスと歌を習い、日劇ダンシングチームに入った。
その後パリに渡り、安アパートの屋根裏部屋を借りてパントマイムの学校に通った。
イヤなことはしない代り、やりたいと思ったらすぐやるのが、オヒョイさん流。
見えないところでたくさんの努力をしている。
『人は一瞬で変われる』集英社
「三十六計逃げるに如かず」という中国の故事がある。
策略はたくさんあるが、困ったときは一旦逃げて兵力を温存し、
機を見て再起をはかることの方が上策だということ。
孫子の兵法の中には、真正面から戦うということより、「いかに弱くみせるか」
「勝ち目がなかったら戦わない」「戦争はやらないに越したことはない」、というような教えがいくつもある。
本当の武術の達人は、豪腕の人ではなく、力を抜くことを知っている人だ。
脱力して、ヒラヒラとしていながら、芯は強い。
「がんばっている姿を見せるのは、カッコ悪い」
猛烈に頑張っても、人前では努力のカケラも見せない、飄々(ひょうひょう)とした人でありたい。 |
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