2012.6.19 |
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背中のかみさま
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菅原里佳さんの、心に響く言葉より…
その日はとても暑くて、買い物に出かけてショッピングセンターにつくと、
店内も蒸し暑くて、あわてて6ヶ月の息子のシャツをぬがせようとしたけれど、
いつも通り、息子は泣きわめき、なかなかうまくいかずあせっていた。
いつもいつも息子は泣いていて、よその赤ちゃんと比べても仕方ないけど、私も落ち込んでいた。
夫も長期出張で、たった一人の子育て。
はじめての子育ては、ツライことばかりに思えた。
切ない気持とあせる気持で必死にぬがせようとする私の後ろから、
「がんばれがんばれ、お母さん。
僕は今しゃべれないし、何もできないけど、すぐに大きくなって、お母さんのお手伝いをするから、
今は僕をよろしくね」
という声が…。
ふりかえると、優しい笑顔でにっこりしながら去っていくおばあさんの姿。
涙が出てしまい、お礼も言えなくて。
でも、何か救われた気がして、その日から、子育てでツライ時、1人で落ちこみそうな時は、
あの「背中のかみさま」の声を思い出してみる。
笑える。
背すじがしゃんとする。
私はまだ大丈夫。
ありがとう、「背中のかみさま」
また、会いたいです。
“北海道札幌市 菅原里佳”(39歳)
『思わず泣けるいい話』河出書房新社
昨今、育児ノイローゼと言う言葉をよく聞く。
核家族がすすみ、まわりに相談する人も、
手伝いをしてくれる親族もいない母親が増えたことも原因の一つだ。
ソニー創業者の井深大氏は、
「育児くらい崇高で素晴らしい仕事はない」と言った。
まさに、その通りだが、同時に育児くらい大変な仕事もない。
体力を使い、エネルギーも使い尽くす、ある程度若くなければできない仕事でもある。
育児を終えた人は、「あの頃は、二度と戻ってこない至福の時間だった」、と思うことがある。
子供が、何の疑いもなく、全力で親のもとに飛び込んでくる瞬間。
手をつないでくれる瞬間。
抱っこして、という瞬間。
生涯に二度とない最高のプレゼントをくれるからこそ、親は頑張れる。
小さな子供は…
今は、なにもできないけど、いつか必ず親を助けてくれる。 |
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