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2012.6.12

多くの先祖を思う

石川洋氏の心に響く言葉より…

最近両腕に入れ墨をした高校中退の娘さんが、叔母さんに連れてこられた。
聞けば両親の暴力にあって家を飛び出し、転々として入れ墨をする羽目になったと語った。

彼女は一息つくと、「でも私の体は私の勝手でしょう」とうそぶいてみせた。
両親から疎外を受けた子は精神的痛手が大きい。

「大変だったね」と前置きして、「それでも、私の体は私の勝手でしょうは、違うな」

「なんでですか、だれか責任を持ってくれるんですか」

「責任と両親の問題は後にしよう。
今、私の体と言われましたが、あなたの身体を構成している細胞にしてもあなたの造ったものではない。
また、両親が造ったものでもない。
何千年という気の遠くなる久遠の昔から多くの先祖と、数知れない先人によって、
あなたは生まれて来たのですよ。
もし、途中でその懸命な努力を怠る先人がいたら、今のあなたはこの世には存在しない。
それだけでも、私の体は私の勝手でしょうは言えないことだと思います」

彼女は純粋な娘さんなのだろう。
「その話、もっと早く聞いていたら…」と涙をこぼした。

「やがてあなたも結婚し、子を産む時がくる。
子供にその腕の絵は何なの?と聞かれる時が必ず来る。
その時に、自分の昔を語り、『すばらしい青年に会ってあなたを産んだんだよ…』
と言える新しい人生をつくり出せるのは、あなたの責任ではないですか。
それが言えたら、両親に『産んで下さってありがとう!』と言えると思いますよ」

『心の杖ことば』ぱるす出版


自分の両親の数を20代(約600年)前までさかのぼると、それは約100万人になる。
30代前なら、なんと10億人になるという。
ただし、血縁関係のない者同士が両親になるという仮定の話だが。

その中のたった一人でも欠けていたら、今の自分はない。

現代の最先端の遺伝子工学においても、無から有を造りだすことはできない。
たとえ原始生命体であろうと、生命そのものを創る事はできないのだ。

それほど、生命の誕生は奇跡のような出来事であり、今我々が存在していることも同様に、
奇跡と言わざるをえない。

「身体髪膚(しんたいはっぷ)これを父母に受く あえて毀傷(きしょう)せざるは孝の始めなり」
という、中国の「孝経」の中の孔子の言葉がある。

体と髪の毛と皮膚、すなわち、我が身の全ては父母からいただいた大切な もの。
だから、傷つけたりしてはならない。

多くの先祖あることにより、我々は今生に生まれることができた。

自分の身体は自分のものであって、自分のものではない。
我とわが身を慈(いつく)しみ、感謝の念で生きてゆきたい。



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