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2012.6.11

みてござる

大谷派浄信寺の西端(にしばた)春江副住職の心に響く言葉より…

佐藤義詮(ぎぜん)先生は立派なお寺の住職さんで、大阪の知事になられた方ですけれども、
ある時大阪・船場の問屋さんにお説教に行かれるんですね。

その問屋の玄関に立った時、大きな扁額(へんがく)があり、
平仮名で「みてござる」と書いてあったらしいのです。

上に上がられたら応接間にも「みてござる」、お手洗いにも「みてござる」、
仏間にも「みてござる」の額が飾ってある。

それで、佐藤先生がご主人に
「珍しいですね。扁額はよう読まない難しい字が書かれてあるものなのに」

とお尋ねになったら、ご主人は次のような話を始められたのだそうです。

その方のお父さんは飛騨高山のご出身なのですが、小さい時に父親を亡くされて貧乏のどん底でね。
お母さんが「どうしてもおまえを養えないから」とおっしゃって、13歳で大阪に奉公に行かれるのです。

いよいよ明日は見知らぬ大阪に出発という日の晩、二人ともなかなか眠れない。
お母さんが「じゃあ、お話ししようか」と夜が白むまで子供にお話をされました。

「貧乏でおまえに何もしてあげられなかった。
何か餞別(せんべつ)をしたいんだけど、それもできない。
物を買うお金もないので、火にも焼けないし水にも流れない言葉をあなたに贈ります」

そう言ってお母さんが平仮名で書いて、少年に手渡されたのが「みてござる」という言葉だったんです。
少年はその言葉を持って大阪に出るのですが、やはり辛い船場でのご奉公があって、
ある時淀川(よどがわ)の堤防を歩きながら

「辛いなあ、お母さんが恋しいなぁ。この川にはまれば楽になれるのに」

と思っていたら、ふと「みてござる」という言葉が頭に浮かんで少年を引き戻すんですね。

それからも、先輩からいじめられたり、いろいろ辛い体験をされるのですが、
そういう時のお守りが常に「みてござる」だったといいます。

この方はやがて船場に店を張るまでに成功し、75歳でお亡くなりになられます。
臨終の場に息子たちや番頭さんを集めて

「いろいろお世話になりました。
私はおかげさまで成功できたと思うけれども、それには、
やはり目に見えない私を引っ張ってくれるものがあった。
それが『みてござる』という言葉なんや。
どうか子々孫々に伝えて長くわが家の家宝としてほしい」
と言われたというんです。

『一流たちの金言 2』致知出版社


こんな言葉がある。

「みてござる
ご先祖さまがみてござる
慈悲のまなこでみてござる」

ご先祖さまや、天は、どんな時でも、やさしく見守ってくれる。
しかし同時に、「お天道さまが見ている」の言葉の通り、悪事も天は見逃さない。

雨の日も風の日も、道行く人を、手を合わせ拝んでいるのは、道端にひっそりと立つお地蔵様だ。
地蔵菩薩と言われ、災難や苦しみから、我々を見守ってくれているという。

「みてござる」

辛いときも、悲しいときも、きっと、だれかが見ていてくれる。



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