2012.5.4 |
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観(かん)と見(けん)
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童門冬二氏の心に響く言葉より…
宮本武蔵は流浪生活を長く送ったが、彼の流浪は、単に日本の国々を訪ね歩いたということだけではない。
必ずそこで情報をキャッチした。
情報の仕入先は、特に安い宿屋であった。
今でいう、ビジネスホテルや大衆酒場やビアホールの中にどんどん入り込んでいって、
そこで庶民から、偽りのない本物の情報を仕込んだのである。
それが武蔵の人生観を組み立てていった。
現代も同じだ、と武蔵は言うだろう。
「人が沢山集まる場所へ行きなさい。
そして情報を仕入なさい。
しかし、人から聞く話や、読む新聞や週刊誌や、あるいはテレビその他から仕入れた情報を、
他人と同じように受け止めていたら、それは駄目ですよ。
むしろ、その情報の中に含まれている半歩先、一歩先の変化を読みとらなければ、
情報をいくら大量に仕込んでも意味はない。
そこが、情報に対して、あなたがそれを活用できるかどうかの分かれ目だ。
同じことを聞いても、同じことを読んでも、違うことを感ずるような情報の処理方法が必要ですよ」
宮本武蔵は、「観(かん)と見(けん)」という言葉をよく使った。
心の目でものごとを見ろ、ということだ。
しかし、その前提は、「聞くよりも、自分の目で確かめろ」ということを言っている。
旅から旅をしながら、剣一筋に生きた彼は、多くのことを聞いたし、また自分の目で見た。
しかし、聞いたことと、見たこととが、必ずしも一致しない場合が多かった。
彼は、耳を信じなくなった。
特に人の噂というのを信じなかった。
自分の心の目が見る事実だけを信じた。
『宮本武蔵の人生訓』PHP文庫
かつて日本の軍では、情報の確度(確かさ、精度)を甲、乙、丙の3つに分けていたという。
甲は、確度が一番高く、それは自分が直接この目で見たという信頼できる生の情報。
乙は、自分以外の信頼できる者がその目で直接に見てきたもの。
丙は、三次情報であり、又聞ききとか、噂話のようなもの。
新聞や報道は、「乙」情報がほとんどだと思われている。
しかし、昨今は電話で取材したり、FAXで送られてくる情報をそのまま流したりすることもあるので、
「丙」情報も多く混じっている。
ネットの情報も同様で、確度の高いものもあるが、単なる噂話のようなものもあるので注意が必要だ。
「みんなが言っている」という言葉もあてにならない。
ほんの一人二人が言っていたことなのに、自分の意見をことさら強調するためのものだったりするからだ。
噂話に振り回されたり、詐欺などに引っかかってしまうときも、
事実を自分の目で確かめなかったことから起こることが多い。
「それは事実か?」と常に疑問を持つこと。
いい話も、悪い話も、心の目で見ることが必要だ。 |
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