2012.4.24 |
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言葉ってすごいね
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『NTTふれあいトーク大賞 優秀作品集』の中から、心に響く言葉より…
僕の親戚はおそば屋さんをしている。
僕は日曜日や祝日に手伝いに行くことがあるが、そんな中、一本の電話があった。
それは出前の電話で「おそばを一つだけ持って来てほしい」という内容であった。
その人の家が近いということで、僕が出前を持っていくことになった。
一番忙しい時間だったので、電話があってから一時間ぐらいたってしまっていたので、
持っていった時におこられると思った。
その人の家までいそいで走っていった。
家につきチャイムを鳴らし元気よく「おまちどうさまです」と大声で言うと、60歳くらいの女の人が出てきた。
その女の人はおこるどころか、出てくるなり頭を深々と下げ、「こんな忙しい時に、
一個だけ持ってきてもらってごめんなさいね。大変だったでしょ。」と言った。
驚いた。
言葉を失って立ちつくしていると「おいくらですか?」とたずねた。
僕はあわててお金をもらい、出前の品をわたした。
そして、さっきの言葉のお返しのように「ありがとうございました」と頭を下げた。
今まで僕は何回も出前に行っている。
その人たちも「ありがとう」や「がんばれよ」などと声をかけてくれるが、
あれほどていねいに言ってくれる人ははじめてだった。
もし、逆の立場でもあれほどていねいには言わないと思う。
それは心の中で「出前を持って来てくれることがあたりまえ」とか
「ありがとう」と言うことが恥ずかしいと思っているからである。
お店にもどり「あのお客様の出前は僕がいつも行くからね」と働いているみんなに言った。
みんなは不思議そうに「なんで?」と聞いた。
そして、今あったことを話すと「いい経験をしたね」と言ってくれた。
その後、僕にこう話した。
「やっぱり人は言葉が大切だよね。
言葉で言わなきゃ伝わらないよね」と。
その通りだと思った。
夜の仕事も終わり、家に帰った。
そして、今度は家族のみんなに今日のことを話した。
すると親が
「言葉は一言で人を喜ばせ、一言で悲しくさせる。
言葉ってすごいね」
と言った。
“山口誠”(東京都品川区 15歳)
『NTTふれあいトーク大賞 優秀作品集』NTT東日本
たった一言で、悲しくもなるし、うれしくもなる。
それが、言葉の力だ。
心の中で、どんなに思っていても、言葉に出さなければ、相手には伝わらない。
「ざるそば」を食べたいと心で深く念じていても、「たぬきそば」と言えば「たぬきそば」が出てくる。
「ありがとう」
「ごめんなさい」
「感謝します」
「うれしい」
「たのしい」
「しあわせ」
言葉一つで、世界が変わる。 |
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