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2012.4.2

感情の吐露(とろ)が上手な人

諏訪中央病院名誉院長、鎌田實氏の心に響く言葉より…

緩和ケア病棟などで患者さんと接して感じるのは、
大学病院やがんの専門病院などで「あと3ヶ月の命」などと残りの人生を宣告されたような方でも、
2年、3年…と生きられる方は意外に多いということ。

そして、その人たちには、ある共通点が多いこと。
それは「感情の吐露(とろ)が上手」だということです。
笑って、泣いて、時には怒る。

笑うのを我慢して、泣くのも我慢して、怒るのも我慢する。
それではストレスがたまって、感情が開放されない。
それよりも、漫才を聞いたり、コメディー映画を観たりして、大笑いする。

心揺さぶられる小説を読んで、涙を流す。
世の中の理不尽な出来事に怒って、その思いを日記にぶつけたり、家族に話してみたりする。
そうした行いは確かに免疫力を上げるのかもしれません。

音楽家で東京芸術大学名誉教授でもある畑中良輔さんという方がいらっしゃいます。
畑中さんとは、ときどき食事をご一緒させていただいていました。
失礼ながら、ブルドッグに似ているので「ブル先生」と呼ぶこともありました。

ブル先生、おいしいものに目がなく、ほっぺたを、それこそブルブルさせながら、
「すごくおいしいね」「素敵なお店だね」などとおっしゃる。

そうした言葉を口に出されるのです。
一緒にいるぼくも、なんだかうれしくなります。

驚いたのは、ブル先生はとても感動したとき、涙を流す。
泣くんです。
僕は感動しましたね。

畑中さんは今、90歳くらいです。
心をオープンにしていることは、元気に若々しく生きるコツの一つなのだと、畑中さんに接していて思いましたね。

『生きる力を磨く66の処方箋』(鎌田實&吉川敏一)PHP研究所


怒ることは、絶対に良くないといわれる。
しかし、理不尽なことやいわれのない中傷に対して、怒りの気持を誰かに伝えられないことは、ストレスがたまる。

だれかれ構わず怒りをぶちまけるのは、問題だが、
どうにもやりきれない気持を打ち明けられる、家族なり信頼する友人がいないことの方が、もっと問題だ。

怒りとは逆に、自分のうれしかったり、楽しかったりする感情を人に伝えることも大事だ。
どんなに感動しても、その感情が伝わらなければ、ないのと一緒だからだ。

「おいしいね」「素敵だね」「きれいだね」「楽しいね」と自然に口に出せる人。
そして、感動の涙を流せる人…

感情の吐露が上手な人でありたい。



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