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2012.3.1

情けは人のためならず

黄文雄氏の心に響く言葉より…

今回の東日本大震災では、世界中から驚くほど多額の義捐金(ぎえんきん)、支援が日本に届いた。
「日本を救え」
「私たちは日本とともにいる」
といったメッセージも多かった。

もちろん今回の地震が世界最大級で被害が大きかったこともあるが、
そもそも日本がこれまで世界有数の支援大国であったからに他ならない。
そうした日本への恩に、世界中がこぞって報いたのである。

1999年9月21日、台湾中部をマグニチュード7.7の大地震が襲った。
最初に駆けつけたのは日本の救援隊だった。
それに続く民間ボランティアと学生ボランティアがぞくぞくと被災現場に到着した。

テレビを通じて見た日本の救援隊に対し、台湾の人びとが最も感動したのは、
日本救援隊がハイテク機器を駆使して瓦礫(がれき)の下から生存者を探し出し
昼夜を問わず救助活動にいそしむ一方、
運悪く助からなかった遺体の前では整列して頭を垂れて黙祷(もくとう)する一幕である。

2008年に中国で起きた四川大地震の被災地でも、
日本救援隊の死者を悼む現場の映像は話題となり、感動を与えた。
それは漢文化にはない風習である。

たいてい、どの国も出入国税関の役人といえば傲岸不遜(ごうがんふそん)なものだが、
日本の地震救援隊が台湾の桃園空港を離れたときは例外だった。

日本救援隊の姿が現われると、税関の職員全員が総立ちとなって深々と最敬礼し、
空港でごったがえしていた出入国客全員が拍手で見送った。
その光景をロビーで見て感涙に咽(むせ)ぶ人もいたのだ。

東日本大震災では、台湾からは157億円もの義捐金が集まった。
米国が約100億円であることと比較すると、
米国の10分の1以下の人口の台湾でこれほどの額になったのは、もともと親日派が多いことも
あるが、やはり台湾中部地震での日本人の活躍が記憶に鮮明に残っているからだ。

また、1890年には、エルツゥールル号の遭難事件があった。
日本を訪れたトルコの軍艦エルツゥールル号が、和歌山県沖で遭難し500名以上の犠牲者を出した事件だ。
近くの大島村に流れ着いた生存者たちを、住民たちは総出で救助し、生存者を献身的に介抱し、
自分たちの少ない食料をこぞって提供し、69名を助けることができた。

その100年後の1985年のイラン・イラク戦争の時、
イラクはイラン上空の航空機に対する期限を定めた無差別攻撃宣言を行った。

イラン国内に取り残された日本人は215名いたが、自衛隊は海外派遣不可という制約があり、
日本航空は安全の保証がないため、臨時便を出せなかった。

このとき、イランの日本大使がトルコ大使に窮状を訴えたところ、
「ただちに本国に求め、救援機を派遣させましょう。
エルツゥールル号遭難の際に受けたご恩は、トルコ人なら誰もが知っています。
恩返しをさせていただきます」と答え、トルコ航空機によって日本人全員が救出されたのである。

『日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか』徳間書店


「情けは人のためならず」という言葉がある。

人に情けをかけることは、人のためなるばかりでなく、やがてまわりまわって自分に返ってくる、ということだ。
それは、日本だけでなく、人間が本来持つ世界共通の感情なのだ。

「報恩謝徳(ほうおんしゃとく)」
受けた恩や徳を決して忘れず、感謝の気持ちで報(むく)いたい。



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