2012.1.20 |
|
金銀財宝よりも |
|
ミシェル・ピクマル氏の心に響く言葉より…
あるところに、ひとりの貧しい農夫がいました。
この農夫は水飲み場に行くたびに、水に映る自分のみじめな姿を見てため息をもらしていました。
(こんなに生活が苦しくっちゃ、幸せなんかとても手が届かねぇ…)
その日もいつものように水飲み場でため息をもらしていると、
あまりにも悲しくなって涙がこぼれ、水に落ちました。
すると突然、水の精が現われたのです。
「ずいぶんと悲しいようだねぇ」と水の精は言いました。
「あんたの欲しい幸せってどんなものなんだい?
言ってみな。
そのとおりにしてやるからさ」
農夫は勢いこんで望みを並べたてました。
お城に住んで、庭には魚も泳ぐような大きな池があって、金銀財宝に囲まれて、きれいな服を着て…。
「これが全部かなえば、もうまちがいなく幸せになれますだ!」
「よく考えなよ」と水の精は言いました。
「急がなくてもいいんだから、ようく考えてからにしな。
おれが消えたら、もうそのあとで望みを変えることはできないんだぜ」
そこで農夫はよく考えて、ダイヤモンドの装身具、見わたすかぎりの土地、
小麦粉がどんどんあふれてくるような立派な水車(なにしろこれがあればもう飢える心配はありません)
などを追加しました。
「最後にもう一度よく考えるんだな!
何か忘れちゃいないかい?
もうすぐおれは消えるぜ」
農夫はもう何も思いつきませんでした。
そこで、「そんなら、土地をもっと増やして…王さまよりも広い土地を頼みます」と言っただけでした。
「そう言うんだら、ま、お望みどうりにしますかね」と水の精は残念そうに言いました。
さて、水の精が消えたと思ったら、農夫はもうお城の中にいました。
まわりには金銀財宝が積みあげられ、窓から外を見れば地平の果てまで豊かな土地が広がっています。
けれども、農夫のそばにはだれもいませんでした。
妻も、子どもたちも、友人たちも…。
農夫はひとりぼっちになってしまいました。
まったくのひとりぼっちに…。
『人生を変える3分間の物語』PHP研究所
どんなに金銀財宝があろうが、豪華な食事が山のようにあろうが、一人ぽっちだったら何も楽しくない。
喜んでくれる人がいるから、人は頑張れる。
応援する相手がいるから、張り合いがある。
人間(にんげん)とかいて、「じんかん」と読む。
人の間(あいだ)、つまり人が住む世の中のことだ。
人間は、人と人との間でしか生きることができない。
人とのご縁や、絆(きずな)こそが本当の宝、と心に深く刻みたい。 |
|
|