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2012.1.12

迷いを吹っ切る

ひろさちや氏の心に響く言葉より…

大学にいた頃、ある学生がわたしのところに相談にきたんです。
学校を辞めて、別の大学を受け直そうか、このままとどまろうか、悩んでいるというわけです。

気持を聞くと、辞める、とどまる、どちらも五分五分だという。
くどいほど念を押しましたが、どちらかに気持が傾いているということはない、と断言するんです。
それなら、とわたしはサイコロをとり出して、偶数なら辞めなさい、奇数ならとどまりなさい、とやったわけです。

そのとたん、
「先生、ふざけないでください!
わたしは悩みに悩んで相談にきているんです。
まじめに聞いてください!」
ときた。

わたしは説明しました。
「あなたが辞めたほうがいいのか、とどまったほうがいいのか、わたしにはわからない。
それがわかる人なんていないんだよ。
いくら迷ったって、悩んだって、答えは出ないんだから、さっさと決めてしまって、辞めるんだったら、
ほかの大学を受ける準備を始めればいいし、とどまるんだったら、もう辞めようなんて
迷いは吹っ切って、ここで一所懸命やればいいんじゃないの」

どうにも答えが出せない大事な問題こそ、サイコロを振って決めればいいんです。
サイコロで決めるということは、仏や神に決めていただくということなんです。

決めていただいたら、そこが生きる場所なのだから、やるべきことをやればいい。
「俺の人生、仏なんかに決められてたまるか」と言うのなら、好きなだけ悩んだり、
迷ったりして、時間を浪費するしかないですね。

『「ずぼら」人生論』三笠書房


人生の大事な決定は、たいていは右か左か、やるかやらないかの二者択一だ。
そして、悩みに悩んだ末の選択は、どちらに転んでもそう大差はない。

神戸の近くの有馬街道に「右も左も有馬道(ありまみち)」という石碑がたっている。
「どちらを行っても最後に合流する」という案内だ。

どちらに決めようと、結局は有馬道のように、同じ道に行き着く。
松下幸之助翁のように、学歴がなかったことが成功につながったと思う人もいれば、
いい学校へ行ったが、一生不平不満を言って暮らす人もいる。

学校に行こうが行くまいが、どちらの道でもよい、すみやかに右か左かに決めること。
そして、決めたら、あとは迷わず決めた道を、ただひたすらまっしぐらに進む。

「決めること」はどちらかを斬って捨てること。
悩みを引きずることは、悩みを楽しむことと同じ。

大事なのは、決めたあとの心の持ち方。
悩みや迷いは捨て、目の前の今の、一事に専念したい。



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