2011.12.24 |
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カーテン越しのバースデーソング |
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ANA元CAの三枝理枝子さんの心に響く言葉より…
娘と妻と三人で福岡に帰る日。
お医者様の判断により、普通の座席に座るのではなく、
ストレッチャー(座席の上に取り付ける簡易ベッド)旅客として、ベッドに寝たまま搭乗することになりました。
ベージュ色のカーテンで仕切られているので、一般のお客様はいつもとは違うと思っても、
そこにベッドがあって、病人が寝たまま乗ってるなど想像もつかないはずです。
小学校4年生の娘は心臓病を患っており、今回、東京で手術をしていただいたのですが、
経過は順調とはいかず、この日は完治しないまま福岡に戻ることになりました。
たくさんのCAさんが「こんにちは」「ご搭乗ありがとうございます」「大丈夫ですよ」と、
温かく迎えてくださり、安心して搭乗することができました。
長時間の移動で疲れたのでしょう。
飛行機が動き出す頃には、娘はスウスウと寝息をたてて眠っていました。
上空で、飲み物のサービスが終った頃、先ほどのCAさんが、声をかけてくださいました。
彼女といろいろとお話しているうちに、手術のことや、娘が飛行機に乗るのを楽しみにしていたこと、
実は今日が娘の誕生日であることなども思わず口にしていました。
しばらくして、娘が目を覚ましました。
すると、担当のCAさんと一緒に二人のCAさんがいらして、
「ハッピーバースデートゥーユー」と小声で歌い始めてくれたのです。
それだけではありません。
「おめでとうございます」と手作りのキャンディバスケットと
クルー(乗務員)の方々が書いてくださった励ましのメッセージ入りの絵葉書を持ってきてくださいました。
娘は突然の出来事にびっくりしながらも、うれしそうに微笑んでいます。
久しぶりに見た娘の笑顔でした。
CAさんたちがバースデーソングの1番を歌い終わった、と思ったら、
また、「ハッピーバースデートゥーユー」が始まりました。
それもカーテンの外で…。
「え…どうしたの?」
私たち家族、そしてCAさんまでもが驚き、顔を見合わせました。
カーテンを少し開けてみると、さらに驚きました。
近くにお座りの女性のお客様方が歌ってくれていたのです。
娘のために。
さっき話していたのが聞こえていたのでしょう。
大合唱ではありませんでしたが、その歌声は客室に響き渡りました。
気づくと男性の声も混じっていました。
多くの人の歌声がカーテン越しに聞こえてきます。
娘の誕生日をこんなにも多くの方にお祝いしていただくなんて…。
大変ありがたいと思う気持ちと、娘を不憫(ふびん)に思う気持ちで胸がいっぱいになり、
涙があふれだしてしまいました。
娘の目にも涙があふれていました。
カーテンに仕切られ、ベッドに寝ている娘の姿は見えないのに歌ってくださった皆様に、心から「ありがとうございます」と、頭を下げ続けました。
人って温かいな。
世の中捨てたものではないな。
皆様に大きな勇気と温かさをいただきました。
『空の上で本当にあった心温まる物語』あさ出版
誕生日は、誰にとっても一年に一度ある大きなイベント。
誕生日を心を込めて祝ってもらうことは、いくつになっても本当にうれしいものだ。
その喜びの大きさは、プレゼントの金額や、品物そのものではなく、どれだけ心がこもっているか、
温かい気持ちが込められているかによる。
誕生日は、人の気持ちが一番伝わる日。
もしどこかのお店で、「ハッピーバースデー」の歌声が聞こえてきたら、一緒にくちずさむ…
そんな、人の喜びや悲しみを感じることができる、心の温かい人でありたい。 |
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